第71話 武道館の後で
文字数 1,850文字
「あと五分ぐらいで着くから」
「わかりました。夜の東京タワー、近くで見ても綺麗ですね」と田舎民らしいことを言うと、彼が気を良くしたようで、自慢気にこう言った。
「俺港区に住んでんだよ」
「そうなんですね」
私がそれ以上何も言わないと彼が不満そうな声に変わった。
「もっと港区すごーいってキャピキャピしてくれ」
「そんなこと言われても東京の区なんか気にしたことないから。あーでも港区女子って言葉ありますね。ということは都民憧れの区なんですよね?」
「派手好きでフラフラしてるような奴らには憧れられてるよ。亜紀ちゃんもうちょっと世の中の動向に関心持って」
何故だか手振り付きで彼が呆れたように言ったので、どうして長野群馬民の私が東京の区を知ってなきゃ行けないのだろうと無性に腹が立った。
「じゃあ丸山さんは前橋と高崎の違いわかるんですか?どっちが群馬民憧れの地だと思います?」
「……県庁所在地だから前橋?」
「ほら群馬のこと何にもわかってない。高崎に決まってるでしょ?もうちょっと世の中の動向に関心持った方がいいですよ」
さっきの彼を手振り付きで再現して、腕組みをして得意気に彼を見た。
「……初めて女の人にやり込められて、なんか腹立つわ」と彼は右折のハンドルを切りながら笑った。
折角だから彼の自慢も聞いてあげようと思い、「どんな所に住んでるんですか?」と彼に話を合わせた。
「住んでる所は普通のマンションだよ、二十階」
正直驚いた、健が今寮の八階に住んでいていて群馬民の中でもかなり田舎者の私達は九階に住めるなんて凄い、夢があると絶賛していたからだ。
「……二十階?タワマン?」
「タワマンってもっと芸能人感ある高層マンションのこと言うんじゃないの?東京じゃ普通のマンションだよ」と彼は機嫌良く笑った。
「そういえば高崎にも二十階建てのマンションあるよね」私がそう呟くと「俺別に寝れればそれでいいんだけどな。一つも部屋とかインテリアに興味のない俺が、どうしてわざわざ20階に住んでるか聞きたい?」
タワマン=女という謎の図式が私の中にはあったので、「女連れてくる為ですか?」と即座に答えると「違うから、適当に遊ぶ女は家に連れて来ないから」と気まずそうに言われた。
彼の言葉を信じるなら私は本当に適当に遊ぶ女ではないらしい。鼓動が早くなったのを合図として、口がまた勝手に喋り出した。
「じゃあどこで会うんですか?」「……何でそんなこと知りたいの?どこでって残るはホテルか女の家しかないだろ?」「あー国道沿いによくあるお城みたいな所」
「ラブホテルは行かないから、清潔感なくて嫌なんだよ。俺ちゃんとしたホテルとるから!亜紀ちゃんはラブホテル平気なの?」
丸山さんはとんでもないことを聞いたので焦った私は早口になって捲し立ててしまった。
「一体何聞いてくるんですか、健は彼女途切れたことないから、ラブホテル詳しいですよ。家に女連れてくんなって言ってあったし。ここに温泉があるとか、プールがあるとこあるとか、別に聞きたくないのに私と智によく教えてくれてました」
彼は笑いながら「亜紀ちゃん焦りすぎだよ」と言った。「焦ってないです、本当焦ってないです」
「ラブホテル行ったことないの?」
彼が豪速球ストレートを投げてきた。今までの経験上、友達に見栄張って行ったことあるって嘘ついても、突っ込まれてすぐにバレる。そして余計に恥をかく。
行ったことないって認めても、別に彼氏いたことないとイコールの訳ではないから大丈夫だろう。
「行ったことないです」と正直に認めた。
「じゃあ今まで」彼がそう言いかけたのを遮って話し出した。
間違いなく「今まで誰かと付き合ったことあるの?」と聞いてきたと思う。年齢よりも体重よりも一番聞かれたくないことだ。
これ以上しつこく聞かれたら、付き合ったことないんだよ!と逆切れするしかない。
「健って身長181あるんですよ、それであの顔だからもう女の子がほっとかなくて、男の人で身長高くて顔がいいって無敵ですよね」
「あー確かに俺も無敵だったな」と彼が言った。
「自分で言っちゃうんですか?」と笑うと彼は「事実だから、顔は健くんとかああいう本物のイケメンには負けるけど、俺180ギリギリあって背高いから色々誤魔化せる。俺おっさんだけど、イケメンで金持ってるからモテるよ」と自慢気に言った。
「凄い自信」と思わず笑った。
「わかりました。夜の東京タワー、近くで見ても綺麗ですね」と田舎民らしいことを言うと、彼が気を良くしたようで、自慢気にこう言った。
「俺港区に住んでんだよ」
「そうなんですね」
私がそれ以上何も言わないと彼が不満そうな声に変わった。
「もっと港区すごーいってキャピキャピしてくれ」
「そんなこと言われても東京の区なんか気にしたことないから。あーでも港区女子って言葉ありますね。ということは都民憧れの区なんですよね?」
「派手好きでフラフラしてるような奴らには憧れられてるよ。亜紀ちゃんもうちょっと世の中の動向に関心持って」
何故だか手振り付きで彼が呆れたように言ったので、どうして長野群馬民の私が東京の区を知ってなきゃ行けないのだろうと無性に腹が立った。
「じゃあ丸山さんは前橋と高崎の違いわかるんですか?どっちが群馬民憧れの地だと思います?」
「……県庁所在地だから前橋?」
「ほら群馬のこと何にもわかってない。高崎に決まってるでしょ?もうちょっと世の中の動向に関心持った方がいいですよ」
さっきの彼を手振り付きで再現して、腕組みをして得意気に彼を見た。
「……初めて女の人にやり込められて、なんか腹立つわ」と彼は右折のハンドルを切りながら笑った。
折角だから彼の自慢も聞いてあげようと思い、「どんな所に住んでるんですか?」と彼に話を合わせた。
「住んでる所は普通のマンションだよ、二十階」
正直驚いた、健が今寮の八階に住んでいていて群馬民の中でもかなり田舎者の私達は九階に住めるなんて凄い、夢があると絶賛していたからだ。
「……二十階?タワマン?」
「タワマンってもっと芸能人感ある高層マンションのこと言うんじゃないの?東京じゃ普通のマンションだよ」と彼は機嫌良く笑った。
「そういえば高崎にも二十階建てのマンションあるよね」私がそう呟くと「俺別に寝れればそれでいいんだけどな。一つも部屋とかインテリアに興味のない俺が、どうしてわざわざ20階に住んでるか聞きたい?」
タワマン=女という謎の図式が私の中にはあったので、「女連れてくる為ですか?」と即座に答えると「違うから、適当に遊ぶ女は家に連れて来ないから」と気まずそうに言われた。
彼の言葉を信じるなら私は本当に適当に遊ぶ女ではないらしい。鼓動が早くなったのを合図として、口がまた勝手に喋り出した。
「じゃあどこで会うんですか?」「……何でそんなこと知りたいの?どこでって残るはホテルか女の家しかないだろ?」「あー国道沿いによくあるお城みたいな所」
「ラブホテルは行かないから、清潔感なくて嫌なんだよ。俺ちゃんとしたホテルとるから!亜紀ちゃんはラブホテル平気なの?」
丸山さんはとんでもないことを聞いたので焦った私は早口になって捲し立ててしまった。
「一体何聞いてくるんですか、健は彼女途切れたことないから、ラブホテル詳しいですよ。家に女連れてくんなって言ってあったし。ここに温泉があるとか、プールがあるとこあるとか、別に聞きたくないのに私と智によく教えてくれてました」
彼は笑いながら「亜紀ちゃん焦りすぎだよ」と言った。「焦ってないです、本当焦ってないです」
「ラブホテル行ったことないの?」
彼が豪速球ストレートを投げてきた。今までの経験上、友達に見栄張って行ったことあるって嘘ついても、突っ込まれてすぐにバレる。そして余計に恥をかく。
行ったことないって認めても、別に彼氏いたことないとイコールの訳ではないから大丈夫だろう。
「行ったことないです」と正直に認めた。
「じゃあ今まで」彼がそう言いかけたのを遮って話し出した。
間違いなく「今まで誰かと付き合ったことあるの?」と聞いてきたと思う。年齢よりも体重よりも一番聞かれたくないことだ。
これ以上しつこく聞かれたら、付き合ったことないんだよ!と逆切れするしかない。
「健って身長181あるんですよ、それであの顔だからもう女の子がほっとかなくて、男の人で身長高くて顔がいいって無敵ですよね」
「あー確かに俺も無敵だったな」と彼が言った。
「自分で言っちゃうんですか?」と笑うと彼は「事実だから、顔は健くんとかああいう本物のイケメンには負けるけど、俺180ギリギリあって背高いから色々誤魔化せる。俺おっさんだけど、イケメンで金持ってるからモテるよ」と自慢気に言った。
「凄い自信」と思わず笑った。