三百八十一話 ハンブラーとゼリー

文字数 1,698文字

「徹底的に虐めてほしい」


そんな俺の一言で地獄が始まった。

手は枷で前に拘束され、猿轡をされている。ハンブラーで睾丸を後ろに引っ張られて根元を挟んで固定されているため、座ったり立ったりしようとすると痛くて動けない。俺は尻を突き上げた土下座のような形を取っていた。


「うう・・・」


大きなシリンジでたっぷりと注入されたのは如何にもと言った具合のピンク色の液体。人肌程度の温度で固まるらしい。タバスコなどの辛いソースを混ぜて使うと拷問級の苦しみが味わえるそうだ。都は『なにを入れたのは秘密』と語尾にハートマークを付けて言っていたが、碌な物じゃないのは確かだ。液体は熱く、内臓をじっくりと痛みが蝕む。時計が見えない位置に居るのでどれ程時間が経過したかわからない。


「ふぐっ、うう、うう・・・」

「ねえ、淳蔵」


床に広がる俺の髪を、都が人差し指で、つつ、と撫でる。


「幼稚園の王子様がこんなことをしているだなんて知ったら、皆、どんな顔をするんでしょうね?」

「んく、う・・・」

「出したい?」

「ううっ、ううっ」

「自力で出せるなら出してもいいよ」


栓をされているので自力では出せない。


「私の王子様だってこと、忘れちゃ駄目よ?」


俺は必死に頷く。


「ん、んふぅ・・・う、ううぅ・・・」


急に、身体が。


「う、ううっ、ううぅうっ・・・」


耐え難い腹痛で寒気がしていたはずなのに。

身体が熱い。


「効いてきた? 媚薬。カシスの良いにおいがするの。フフ、血色が良くなってきたね」

「んう、んう・・・」

「ああ、ジャスミン用のトイレシート敷かなきゃ」


屈辱だ。犬用のトイレシートで、俺はこれから。

都はゆっくりとした動作でトイレシートを敷いている。

かさかさと擦れる音すらいやらしい。


「ハンブラーは外してあげるけど、その体勢を維持してなさいね」


俺が頷くと、そっと、ハンブラーが取り外される。途轍もない解放感に腹がぎゅるぎゅると反応する。痛い、気持ち悪い、吐きそう、悪寒がするのに身体が熱い、やがてくる更なる開放に胸が高鳴る。気持ち良い。


「ふーっ、ふーっ・・・」


尻から背中にかけてひと撫でされただけで、


「うんんんんんっ・・・!」


イッてしまった。


「ま、あれだけの量を直腸で吸収してるんですもの、こうなるわよね」


俺は身体を崩さないように必死になる。


「さて・・・。全部出さないとね」


覚悟が決まらないまま栓が抜かれる。聞くに堪えない下品な音が部屋中に響く。カシスのにおいと、嫌なにおい。排泄の快感が永遠に続く。最早カタルシスであった。


「おふっ・・・おうぅ・・・」

「寝転んでいいよ」


お許しが出た。俺は横向きに倒れる。都が後片付けをしている。もどかしい快感が止まらない。自分で触ることまでは許されていない。身をくねらせるしかなかった。手枷が外され、猿轡が外される。


「苦しそうね」

「みやこさまっ・・・! からだが、からだがあついぃ・・・!」

「そう」

「あつぞうのことだいてくださいっ・・・! おねがいしますぅ・・・!」

「いいよ」

「ありがとうございますっ・・・!」


挿入されると、一瞬、意識が飛んだ。戻ってくると同時にイッてしまう。雄としてイッているのか雌としてイッているのかわからない。


「あぁああぁああああぁああッ!!」

「ンフ、良い気分・・・」

「ふぎっ、イッ!? うぎゅぅうぅうう!!」


情けない俺の目の前で、大きな胸が揺れている。


「ゼリーが残ってトイレが詰まったら困ると思って、特別長いのを挿れてるんだけど、一人でちゃんと全部出せたみたいね。偉い偉い」

「あぎっ、が、どうございばずぅ!」

「じゃあご褒美ね。明日立てなくしてあげる」

「あがっ、おおっ、おぉおぉ!!」

「あはは」


翌日は正午を過ぎるまで、本当に立てなかった。


「『クセ』になるわあんなんされたら・・・」


ベッドに腰掛け、痛む腰をさする。湿布を貼らなくては。


「・・・ンフッ」


つい笑ってしまった。幼稚園の王子様の正体は、ご主人様に虐められて大喜びするド変態で、腰には湿布。園児達のママさん連中に抱かれているキラキラしたイメージとは、程遠いどころか想像もできないだろう。談話室に行くか迷って、美代と直治に嫌味を言われそうなので、やめた。
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