百十一話 初めて1

文字数 1,980文字

このところ、欲求不満だ。ストーカーを警戒していたから、直治が一回遊んでもらっていた以外は、俺達は都に遊んでもらえていない。


「はぁ・・・」


こっちから誘って、みようかな。


『遊んでほしい』


迷いに迷った末、プライベート用の携帯でそう送ってみる。心臓がどきどきしてきた。


『おいで』


返事はすぐに来た。俺は事務室を飛び出した。ノックせずに都の部屋に入る。


「美代、忙しいからちょっとだけよ?」

「うん」


俺は鍵をかけ、都に抱き着く。ふんわりと香水のにおいが漂って、吸っているだけで意識が飛びそうになるほど気持ち良かった。


「初めてした時みたいに、してあげようか?」

「あは、お願いします」


手を繋いで寝室に行き、俺は服を脱いでベッドに腰掛ける。都は俺の隣に身体をぴったりとくっつけて座った。柔らかい手で俺の肩を抱いて、頬にキスをしながら、ゆっくりと男根をしごき始める。


「大きくなったね。初めて会った時は、私と同じくらいの背丈だったのに」

「ん、はあ・・・。都の、おかげだよ・・・」

「あの時はメイドを雇っていなかったから、私の下手くそな野菜炒めばっかりだったじゃない。退屈な食事だったでしょ。ごめんね」

「そんなこと、あ、ない・・・。俺、一番好きな食べもの、都の野菜炒めだよ・・・」

「なんて可愛いことを言うのこの子は。じゃあ、明日、作ってあげる」

「ん、嬉しい・・・。あっ、あっ・・・」

「気持ち良い?」

「すごくいい・・・」

「愛してるよ、美代」


骨の中に甘い痺れが走る。なにも考えられなくなって、俺はシーツを掴んでいた手と、都の太腿に添えていた手をぎゅっと握ってしまった。そして、射精する。


「あっああ、ご、ごめんなさい」

「うん?」

「ス、スカート・・・」


都は笑って顔を横に振る。今度は俺の精液を滑りに、くちゅくちゅと音を立てて男根をしごき始めた。


「あっ、あっ、も、もう一回するのっ?」

「一回で足りるの?」

「た、足りない」

「擦りすぎて痛くなるまでしてあげるよ」

「ああ、俺、すごい、幸せ・・・」


結局、四回イかせてもらった。都の部屋のシャワーを浴びて、事務室に戻る。


「はぁー・・・」


俺はとてつもない優越感を抱いていた。田崎や、今まで都に言い寄ってきた男達にだ。あいつらは都の愛情が海よりも深いことを知らない。あいつらは、都の口に一方的に唾液を流し込んで、大きな胸だと喜んで揉みしだいて、膣に挿入して腰を動かすことしか考えていない。


「ハハッ、ゴミ共め」


全員、嬲り殺しにしてやる。

かりかり。

ジャスミンがドアを引っ掻いている音だ。俺はドアを開けてやる。


「ッチ。なんだよ」


ジャスミンは大きな黒猫を咥えていた。


「あっ、おい。どこからそんなもの持ってきたんだ」


変な足音が聞こえた。そちらを見ると、片足の千代がぴょんぴょん跳ねながらこちらに近付いてきていた。


「ああっ、美代様! ジャスっちを捕まえてくださいぃ!」

「えっ、ああ、うん」


俺はジャスミンの首輪を引っ掴んだ。千代が壁を伝いながらぴょんぴょん跳ね、バランスを崩し、俺の肩に手をついて立ち止まる。


「あっ、すみませんすみません!」

「いいよいいよ。それより、この猫、まさか・・・」


ジャスミンの咥えている猫の瞳は、千代のピアスと同じピンクオパールの色に輝いていた。


「私の足ですゥ!」

「やっぱり」

「ジャス太郎! 足を返しなさい!」


ぺっ、とジャスミンが猫を吐き出す。猫はしゅるしゅると千代の足に姿をかえた。千代の足に靴と靴下は無かった。


「いやァ、さっきジャスぽんが変な夢を見せてきまして、大きな黒猫がいーっぱいワラワラしていた夢なんですけど、それを見たあとになんか身体が変だなーと思ったら、美代様達みたいに使い魔が出せるようになっちゃって・・・」

「ふむ」

「でも、一匹一匹が大きいんで身体の大半を持ってかれちゃうみたいなんですよねぇ。私の猫は十五匹が限界みたいです」

「へー、成程・・・。俺の鼠は何匹出せるんだろう?」

「おっ? 試してみますか?」

「あ、いや、服が脱げちゃうみたいだし、夜に一人の時にやるよ。淳蔵と直治にもこの事を伝えておいで」

「はい! 靴と靴下回収したら伝えてきますゥ! ありがとうございました!」


千代が去っていく。ジャスミンはオテとオカワリを繰り返していた。


「気は済んだろ。出てけよ」


オテ、オカワリ、オテ、オカワリ。淳蔵も直治も、こいつに付き合って手を差し出して遊んでやっているのを見たことがある。俺はいつも徹底的に無視するが。

きゅんきゅん。

甘えるように鳴いて、もう一度やり始めた。こいつが居なかったら、俺は都に出会えていないと思うと、邪険にし続けるのもどうかと思い始めた。


「・・・はいはい。顔は舐めるなよ」


しゃがんで、手を差し出す。ぽん、ぽん、と俺の手の平にジャスミンの肉球が触れた。


「ありがとよ、馬鹿犬」


ジャスミンは首を傾げた後、にぱっと笑って去っていった。
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