二百二話 違い

文字数 2,311文字

ボールギャグを着けられただけで、手足は自由、という、自ら隷従している状況にどうしようもなく興奮していた。

きゃちきゃち。

都がにんまりと笑って、アルミ製の洗濯バサミを開閉して鳴らす。無機質で冷たさを感じる見た目をしていて、怖い。俺は息を吸いながら、小さく首を横に振った。散々指で擦り潰されて勃起した乳首を、きゃち、と挟まれる。


「んっ、う!」


強い意志を持って抵抗しようとしても、調教された身体が勝手に喜んでしまう。俺はシーツを掴んで暴れないようにするのが精一杯だった。

きゃちきゃち。

もう一つ、くる。


「うううっ!」


俺は男なのに、なんでこんなに、乳首で感じてしまうんだ。肉体的にも精神的にも、都無しでは生きていけない。

都は銀色の尿道プラグを俺に見せた。

持ち手にリングが付いており、プラグ部分は先端に行くほど細くなっていくが、ぽこぽこと丸く波打っている。俺の喉がヒュッと空気を吸い込んだ。さっきより強く首を横に振って都を見上げたが、都は片眉を上げていやらしく笑うと、俺の尿道にプラグをゆっくりと押し込んだ。


「ぐうぅっ! うんんっ! んぐっ、うう・・・!」


必死に堪える。暴れたりしたらどうなるか。怖い。丸みがコリコリと中を擦り、抉り、削っていく。苦しい。切ない。


「う、うう・・・」


都は黒いバイブを取り出し、俺の頬に擦り付け、顔の上に乗せる。大きい。ずっしりと重い。どんな挿入感がするのか想像しただけで、下腹部が熱くなる。都は俺の顔からバイブを放すと、カチ、と目の前でスイッチを入れた。途端にいやらしい機械音が鳴り出して、バイブが振動しながらうねうねとのたうつ。性能をたっぷりと俺に見せてから、都は、カチ、とスイッチを切った。俺は自分の足を抱え、尻を差し出す。都が俺の腰の下に枕を押し込んで、少し体勢を楽にしてくれた。バイブにローションを塗りたくり、俺の尻の穴に先端をあてる。


「うぅっ! ぐ、ううううっ!」


みちみちと中に入ってくる。大きい。大き過ぎて苦しい。なのに、それが凄く凄く気持ち良い。もっと欲しい。もっともっと。


「んう!? ぐっ!! うんっううううう!!」


都はバイブを奥深くまで入れると、左右に回転させた。ねぢねぢと尻から音が鳴っている。身体が中から捩れていく感覚に身悶える。

カチ。


「うあっ!! あああああああああああっ!!」


バイブが中で激しく暴れ始めた。身体が勝手に縮まり、仰け反り、縮まり、仰け反る。


「・・・っく、う、ふ」


さっきから、都がなにも話さない。俺の喘ぎを楽しんでいるんだろう。いつも俺に恥ずかしい思いをさせて、それを喜んでいる。悔しくて声を堪えていると、都はバイブを握って引き摺り出し、奥に深く差し込んだ。


「んああぁああぁあああああああっ!!」


緩急を付け、浅く、深く、抉るように角度をかえて、ぐりぐりと前立腺を押し潰される。


「ああっ! あ! あうう! んぐっ! ぐう! んうううう!」


あっちこっち責められて、もうなにがなんだか、わけがわからない。


「あぁあ! ひ、ひぐぅ! ひ、ひぎあいっ! ひ、ひあこぉ!」


都は笑って、首を横に振る。


「ひぎっ!? ああぁあ!! お、おえあいっ!! い、いあしぇえ!!」


出したいのに、プラグのせいで出せない。


「おえあいしあう!! なおいを、いぃ、いあしぇえくああいっ!!」


都はバイブを一番奥深くまで押し込むと、プラグのリングを掬い上げるように人差し指を引っかけ、くいくいと指を曲げた。ゆっくり、ゆっくりと、引き抜かれていく。丸みが尿道の中をぐりゅぐりゅと移動する。


「おぉおおぉ・・・! んおっ、おあぁ・・・!」


くる。射精の瞬間が近付いてくる。悦びで身体が震える。

ぷちゅっ。

プラグが抜かれた。その瞬間、都がぱくりと男根を咥えて舌でべろべろと舐め回しながらぢゅうぢゅう吸い付いてきて、最高に気持ち良くてあっという間に射精してしまった。自分の足を抱える指に力が入る。


「あ・・・が・・・おぉお・・・」


ちゅうう、と最後の一滴まで搾り取られる。ちゅぽん、と音を立てて都が男根から口を放すと、俺の臍に精液を吐き出した。尻からもバイブを抜き、スイッチをオフにすると、都は俺の口からボールギャグを取り外した。


「きもちぃ・・・。もっと・・・、もっとぉ・・・」

「片足持っててあげるから、自分でしごきなさい」


都は俺の膝の裏を持ち上げ、尻の穴にバイブを挿入し、抉り始める。


「あぁっ!」

「キスマークつけてほしい?」

「あうっ、つ、つけてくださいっ! みえるところにぃ!」

「見せつけて優越感に浸りたいだなんて、悪い子ね」


ちゅう、と鎖骨を強く吸われる。


「あぁ、しあわせ・・・」

「ほら、自分でしごきなさい」

「はい・・・」


言われた通り自分で男根をしごくと、先程までの束縛を経て得られた解放感がとてつもなくて、俺は馬鹿になって善がり続けた。

翌朝。


「直治さん、おはようございまーすぅ!」

「おはよう」


メイド達が出勤してくる。俺の鎖骨のキスマークを見ると、金鳳花は顔を真っ赤にし、真理は視線を右往左往させながらも何度も確認し、いつもは冷静な桜子までもが表情を崩して驚いていた。

今までは、俺が都に辱められる夢を見ても、それが現実であったと確証づけるものが無かったからなのか、気まずそうにはしていたものの、仕事と割り切って接してきていた。今回は違う。誰からも見える位置、俺の鎖骨には、都につけられたキスマークがある。


「あの、直治様」


真理が言う。


「なんだ?」

「鎖骨のあたりにあるそれ、虫刺されですか?」

「ん? ああ、そうだな・・・」


敢えて返答を濁した。メイド達が仕事をするために事務室を出ていく。


「・・・『違い』がわかんねえ」


独り言ちた。
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