十話 儀式

文字数 2,317文字

夜、私は都様の部屋に呼び出されていた。

こんこん、ノックは快楽の音。


『どうぞ』


愛おしい都様の声。


「し、失礼します」


私の声は震えていた。扉を開けると、いつもは穏やかな表情を浮かべている美代様が、どこか見下すような、威圧するような無表情で私を出迎える。私が部屋に入ると、美代様は鍵をかけた。テーブルを囲むように置かれた椅子にはそれぞれ都様、淳蔵様、直治様が座っていた。美代様も椅子に座り、三人の息子達は不機嫌そうに私を見る。都様だけがにんまりと微笑んでいた。


「うぐ、あ、都、様・・・」

「どうしたの、絵葉さん。息が荒いけど、もしかして体調が良くないの?」


都様の胸元は大きく開いていて、太腿にも深いスリットが。


「わだじ、小鳥に、ごど、ごどりに・・・」


都様が椅子から立ち上がり、私に寄り添うと、私の身体にそっと手を添える。柔らかくて、冷たい。


「小鳥? ああ、そうそう。絵葉さん、前に『終の棲家』って言っていたでしょう? 私もそれ、良いと思ってね。絵葉さんさえ良ければ、ずっとここで働いてもらおうと思って、細かい話をしたくて呼んだのよ」

「あの、わだし、あの・・・」

「もういいよ、都」


美代様が溜息を吐いて立ち上がった。軽蔑するような表情で私を見下す。


「君は夢を見たんだろ? 俺達が都と、文字通り痴態を演じていたのをさ」


美代様はハンと笑った。


「自分も都に滅茶苦茶にしてほしいって思ってるんだ。例え俺達が、」


歯を、いや、牙を見せるように笑って、


「人を殺して喰うような人ならざる者だったとしても、だ」


と、美代様は言った。淳蔵様が長い腕をひらひらと振る。連動して手の平もひらひらと揺れた。


「例え話だぜ、例え話。なァ、直治」


直治様は黙って立ち上がり、都様になにかを差し出した。私はそれを知っている。けれど見るのは初めてで、まさか自分に使ってもらえるかもしれないだなんて。


「小鳥ってね、飼い主の居ない『外』では生きていけないの。それからとっても愛情深くて、種類によっては『コンパニオンバード』なんて呼ばれている子もいるくらい。貴方はどう?」


私の手首より太いかもしれないペニスバンドを見て、私は、もう。


「私のこと、好き?」


爆発した。


「みッ、みやござまああああ!! 私、小鳥でもなんでも構いません!! 都様にぐちゃぐちゃにされたくでッ!! す、好きです!! 好きで好きで好きで好きでッ!! お願いですッ!! 私を都様の奴隷にしてくだざいいいいいッ!!」


私は人生で初めての土下座をした。屈辱的でもなんでもなかった。


「絵葉さん、顔を上げて」


都様の言葉に私は従う。都様は赤いドレスを脱いで、黒い下着一枚になった。そのままペニスバンドを装着すると、跪いた美代様が私達の間に割って入る。


「都ぉ、絵葉君には明日も働いてもらわないといけないからさぁ、濡らすなら俺が手伝うよ」


そう言って、美代様はペニスバンドをしゃぶり始めた。余計なことしないでほしい。


「お前がしゃぶりたいだけだろ馬鹿美代」


淳蔵様と直治様が都様の両脇に立って美代様を見下ろす。美代様は気にせずじゅぽじゅぽと音を鳴らした。


「お前、名前なんだっけ」


淳蔵様に突然言われて、興奮極まった私の脳はまともな反応を返せない。


「名前も言えないのかよ・・・」


心底呆れたようで、淳蔵様は溜息を吐きながら私から視線を外し、美代様を見て笑った。


「絵葉、自分でも慣らしておいた方がいいぞ」


直治様がいつもの表情を変えずに言うと、美代様がペニスバンドから口を放した。


「ん、必要ない。今日は俺が食事当番だったからな。絵葉君の食事には薬を混ぜてある」


満足したのか、美代様が立ち上がる。息が荒れていて、目は潤んでいた。


「通りでイッちゃってるわけだ」


淳蔵様がくすくす笑った。


「絵葉さん。下着を脱いだらテーブルの上に仰向けになって、足を開いて」


私は都様に指示された通りにする。都様が私に覆い被さり、何の断りもなく挿入した。


「んぎっ!? いいいっ!!」

「あら、ごめんなさい。痛かった?」

「い、いだいでずぅ・・・。私、初めてで、もっと、優しく・・・」


身体が中央から真っ二つに裂けるような痛み、異物感。想像していた快楽とは、違う。都様からの愛を感じない。


「もしかして、『思ってたのと違う』って思ってる? あは、当然じゃない。息子達は調教されてるんだから」

「ちょう、きょう」

「絵葉さんも調教してあげるね。ほら、痛いだけじゃないでしょ? ぴりぴりした痛みが、ゾクゾクこない?」


ゆっくりゆっくり、浅く浅く、都様は挿入を繰り返した。


「はい、処女喪失おめでとう。つらかったでしょ? もう終わりだよ」


都様は、ペニスバンドを抜いた。

抜いてしまった。

私は、もっと・・・。


「みーやこっ、次、俺にしてくれよ!」

「うへぇ、こいつの体液ついてるんだぞ・・・」

「俺、そういうの気にしないしぃ」


美代様が都様の首に腕を絡めて言うと、淳蔵様が呆れたように肩を竦めて両手を上げた。


「うーん、いいよ。内臓の位置が変わっちゃうくらいぐちゃぐちゃにしてあげる。淳蔵もする?」

「す、する・・・」


一歩引いてその様子を見ていた直治様が私の横にしゃがむ。


「・・・おい、大丈夫か?」

「・・・なこと、しないで」


直治様が首を傾げる。


「余計なことしないでッ!! 私と都様が愛し合ってる途中でしょッ!!」


私が叫ぶと、美代様が憎ッたらしい表情をしながら腕を解いた。


「都様・・・。私の都様・・・。私、明日のお仕事も頑張ります。美代様の言うことをよく聞いて働きます。ですから、もっと私を調教してください・・・」


テーブルから、私の血が流れて絨毯を汚す。

ああ、都様は微笑んで、


「じゃあ、続けましょうか」


それからは、夢の時間だった。
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