二百九十話 自分で自分を

文字数 2,523文字

「うっ、んんっ、うう、う・・・」


肘をついて四つん這いになり、俺は必死に耐えていた。


「くぅっ、いッ!? はっ、はあっ・・・」


先端に強力な磁石を取り付けた大きなリング。磁石によって俺の乳首は潰され、都がリングに引っ掛ける重りのせいで引っ張られて伸び、少し身体を動かすだけで失禁しそうになる。痛みなのか快楽なのか、わからない。


「ああっ・・・ち、ちぎれる・・・」

「千切れたら都ちゃんに授乳できなくなるよ。頑張ろうね」

「う・・・、は、はい・・・」

「直治、痛い? 気持ち良い? 両方?」

「わ、わか、らな・・・い・・・」


都は俺の後頭部を優しく掴み、ぐい、と曲げさせる。


「ガッチガチに勃起してるけど、気持ち良くないの?」

「う、あ、ち、ちが・・・」

「なにが違うの? 息を吹きかけただけで爆発しそうな程になってるけど?」

「ごっ、ごめんな、さいっ・・・」


汗が滴る。


「言い訳したお仕置きよ。ずっと頭を下げてなさいね」

「は、はいっ・・・」

「徹底的に辱めてほしいのよね?」

「そ、そうです・・・」

「泣いて嫌がってもやめないでほしいのよね?」

「そ、そうですっ・・・!」

「じゃあ、『アレ』がいいかな?」


俺の隣にしゃがみ込んでいる都が立ち上がる。棚を開けてなにかを取り出す音。再び俺の横にしゃがみ込み、一つの張形を俺に見せた。


「これ、なあんだ?」


なんの変哲もない、寧ろ、いつも挿れられているものより小さい。


「わ、わかりません・・・」

「これ、二人で作ったものよ。直治、自分に犯される気分を教えてあげる」

「・・・ま、まさか、」


昔、都が作った、勃起した俺のモノで型を取ったもの。


「や、やめ、」


ゆっくりと、捻じ込むように挿入される。


「あらまあ、呆気なく射精しちゃって」


妖しい声で都が言う。床に落ちた俺の汗に精液が混じった。


「乳首のおもちゃは外してあげる。そっちの方が集中できるでしょ? 中に挿れたままベッドに乗って、死にかけの蛙みたいに足を開きなさい」


都は強力な磁石を指の力だけでいとも簡単に外した。解放されたあとも、じくじくと疼く。ゆっくりと立ち上がると、身体の中の肉が勝手に擦れて、どうしても意識してしまう。尻の穴に異物を突っ込んだまま動くなんて、間抜けな姿だ。しかも、それを人に見られているだなんて。


「あはっ、乳首、痛そうね。舐めて慰めてあげる」


れろ、と舌が撫でる。


「ああぁああぁっ!!」

「んー」


ちゅぱちゅぱとしゃぶられる。


「直治、泣く程気持ち良いの?」

「は、はい・・・」

「どうしようもないクソマゾだね」


罵倒がゾクゾクと沁みる。


「自分でいいところ弄って、自分でいいところ抉りなよ。見ててあげる」

「はい・・・」


俺は片手で乳首を弄って、片手で張形を持って身体の中を抉る。


「あッ、ああッ! あうっ、うっ、ふううっ!」

「うーん・・・」


ぎゅう、と乳首を抓り上げられる。


「いああああッ!!」

「乳首にピアス開けてさ、中身入りのゴムを括り付けるの、やりたいかも」

「そ、そんな、」


そんな、屈辱的なこと。


「やらないけどね」


ぱっ、と都が手を離した。


「私の直治」


すり、と腹筋を撫でられる。


「私だけの直治」


手はそのまま、胸板に登り、首を柔く絞めた。


「・・・でしょ?」


本気を出せば、いや、本気を出さなくても、都は俺の首を簡単にへし折れる。機嫌を損ねたわけでもないのに、回答を誤ると殺されそうな気がした。冗談は、許されない。都の目は、濁り、淀んでいる。下瞼がぴくぴくと痙攣していた。正しく肯定する言葉が見つからないので、細かく頷くことしかできなかった。


「良い子ね」


都はにこりと笑った。開いた目蓋の中には、綺麗な黒い瞳があるだけだった。


「ご褒美にちゅーしてあげる」

「あっ!?」


都は張形を握っている俺の手を掴み、引き抜く。ブラウスと下着を脱ぐと、大きな乳房の先にある乳首を抓み、俺の乳首に擦り合わせた。


「ど・・・どこでちゅーしてんだか・・・」


恥ずかし過ぎる。でも、気持ち良い。


「ん、フフッ・・・」


硬い。俺の痴態に興奮しているんだ。


「もっと楽しいことをしようね」


都は俺から身体を離し、スカートを脱いだ。吃驚した。下着ではなく、ペニスバンドを装着するためであろうものを履いているが、肝心の『角』が無い。まさか。嫌な予感と共に、酷く興奮した。俺はその嫌な予感が、当たってほしかった。


「特別に作らせたの」


そう言い、都は張形を装着する。カチ、と音が鳴った。


「フフ、直治になった気分」


都は白い指をくねくねと動かし、張形を、ペニスバンドを撫でる。


「どう? 興奮するでしょう?」


悔しい。これ以上ない程興奮してしまっている。


「どこまで届くかな?」


俺の下腹部に乗せ、その先の腹の肉を人差し指でぐっと押す。


「この辺りかなぁ・・・」


最悪の気分だ。じれったい程疼いている。


「さて、直治」


ぴと、と先端があたる。


「今から、」


都は牙を見せて、にい、と笑う。


「ボッコボコにしてやるよ」


ぐぐ、と中に入ってくる。自分でするのとは全然違う。


「腸壁抉って前立腺ブッ潰してやるから、射精する時は『ありがとうございます』って言えよ。わかったか?」


罵倒が、ゾクゾクと、沁みる。


「わ、わかり、ました・・・お願いします・・・」


答え終わると同時に、激しく腰を打ち付けられる。

奇妙な快感。

自分に犯されている。

僅かな不快感、屈辱。今度はゆっくりと腰が動く。


「あぐっ、そ、それやめっ・・・!」


肉が勝手に絡み付いて、形がハッキリとわかる程。

奇妙な快感。

背徳で背骨が蕩ける。

もう、もう、


「あぁあああっ!! ありがとうございますぅうぅうぅッ!!」


射精してしまった。


「直治、気持ち良かった?」

「はあっ・・・はあっ・・・。き、きもち、よかったですぅ・・・」

「どう気持ち良かったの?」


これ以上の辱めは、ない。


「うっ・・・。ふ、太くて、い、良いところに届いて・・・。うぅ・・・。雁首が高くて、掻き、出されて、き、気持ち良かった、です・・・」

「もう一回?」


もう、なにがなんだか。


「お・・・お願いします・・・。直治に、都様の、挿れてください・・・」

「私の? 私のじゃないけど?」


都が笑う。俺は静かに息を吸った。


「な、直治に・・・直治のモノ、挿れてくださいっ・・・!」


人生で一番恥ずかしい夜だった。
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