百八十三話 顔が良い男の

文字数 1,904文字

十一月。都は夏を『日傘に蝉時雨が跳ね返る夏』と表現した。冬はどのように表現するのだろうか。


『美代君、母さんに『お詫び』させてくださいな。なんでもしますよ』


プライベート用の携帯に都からメッセージが入った。


『下準備して行きます』


と返信して、事務室を出て自室に戻った。『下準備』は苦しくて汚くて、それが惨めな気持ちになるのに、これから死ぬ程気持ち良くしてもらえると思うと、身体が甘く熱を持って止まらない。シャワーを浴びて部屋を出て、都の部屋に行く。ノックせずに入った。


「いらっしゃい」

「いらっしゃいました」

「ンフフ」

「エヘヘ」


ベッドに行き、全裸になる。都は紺色の下着姿になった。


「身体、もう平気なの?」

「教えてあげる」


俺がベッドに寝転ぶと、都が覆い被さった。しゅりしゅりと肌が擦れ合う音を立てながら、都が俺の身体を両手で撫でる。腹から胸、首、頬、肩、腕、手、指の先。


「んふ・・・あぅ・・・」

「ね? 元気になったでしょ?」

「う、嬉しい・・・」


涙が滲む。


「ごめんなさい。俺、なんの役にも立てなくて・・・」

「その卑屈さは既に傲慢ですよぉ?」

「・・・あは、名言だ」

「フフッ、受け売りだよ」


ぎゅうう、と乳首を抓られる。


「うっ、ん・・・」

「美代は世界一可愛いね」


するり、と男根に指が絡みつく。緩急をつけて弄ばれて、あっという間に果ててしまった。


「うううううぅんっ、ううっ、は、はぁ・・・」


都がペニスバンドを着け、ローションを塗る。


「も、もう、我慢できない・・・。今すぐ挿れて・・・」


身体を開く。つぷ、と尻の穴に先端が当たっただけで、脊髄をゴリゴリと快楽が削っていく。


「あ、あっ、あぐっ! お、おぉおああおおおぉっ!」


俺用の枕を抱きしめ、顔をうずめて声を殺す。


「はぐっ、はぐぅうううぅっ・・・!」

「・・・あは、ちょっと、興奮し過ぎちゃったかも」


都を見ると、首まで真っ赤になっていた。


「あっ! 無理しちゃ駄目だよっ!」

「黙りな」

「ちょっと、うあぁ! あうううっ!」


身体の主導権を都に握られて、都を止めることができない。


「あぁっ! お、おなかっ、きゅんきゅんするぅ!」


駄目だよ、都。

そんな目で見ないで。

そんな、

『けだもの』の目で俺を。


「ぎもぢぃ! おおぉおぉおおっ! だ、だめぇっ! や、あ! やめてっみやこっ! かおまっかだからぁっ!」

「美代の瞳、綺麗ね」


都は夢心地で腰を振り続ける。


「ああ、久しぶりに、生きている心地がする・・・」


調教された身体は喜んで主を受け入れ、浅ましく快楽を貪る。


「いぃいいぃいいッ!! イくぅううぅううううッ!!」


尿道を精液が昇っていき、そのまま射精する。二人の荒い息が重なり合う。都がゆっくりと、俺の胸に倒れ込んできた。熱い。


「み、みやこぉ、だいじょうぶじゃないでしょ・・・」

「平気平気」

「・・・ねえ、みやこのこと、だっこしたい。だから、ぬいて?」


都は俺の胸に顔をうずめたまま、ゆっくりとペニスバンドを引き抜く。


「あぐっ、うう・・・。ふっ、ふぅ・・・」

「ごめんね。お詫びするつもりだったのに」

「・・・ううん。俺が抱いてって言ったんだよ。都は悪くないから」

「はぁー・・・なッさけねえ・・・」


都は起き上がり、ペニスバンドを外す。俺が寝たまま両手を広げると、都は少しだけ身体を被せるようにして、俺の上に乗っかった。


「気持ち良かったよ」

「そりゃ良かった」

「今も気持ち良い」


都を抱きしめる腕に力を込める。


「もうやめてね、あんなことするの」

「あんなこと?」

「とぼけないで。中畑のことだよ」

「どうしようかなあ・・・」

「都のことを大切に思っている俺が、都が傷付くところを見て、こころを痛めることを、都はなんとも思わないの?」


都は沈黙する。


「『自分はどうなってもいいから』って考え方、やめてよ。つらいのに、苦しいのに、悲しいのに、悔しいのに、怒ってるのに、我慢するなんてやり方、やめて」

「・・・ハハ、直治にもそんなこと言われちゃったなあ」

「あー、悔しい。先を越されたか」

「美代が自分のことを大切にしてくれるなら、考えても良いかもね」


次は俺が沈黙する番だった。


「おじさんはさぁ、こういうやり方しかできないんだ。許しておくれよ」


赤い顔で俺を見つめて、笑う。


「・・・許してあげない」


抱きしめた都をひっくり返して、俺が都の上に覆い被さる。額や頬にキスしまくると、都はくすくすと笑った。


「おじさんに良いモノ見せてあげるよ」

「なあに?」

「顔が良い男のオナニー。見たいでしょ?」


上体を起こし、右手を男根に、左手を尻の穴に這わせる。


「性格は悪い」

「そこが好きなくせに」


舌で唇を舐めてから、しごきながら穿り始める。最高に、気持ち良かった。
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