百十七話 駅弁

文字数 1,953文字

シンプルにバックと正常位で抱いてもらって、二回射精したあと。


「美代、『駅弁』しよっか」

「ふえ?」


都の提案の意味が、初めはわからなかった。


「駅弁って、攻めが受けを持ち上げてするヤツでしょ・・・?」

「そうだよ」

「も、持ち上げられるの? 俺、58kgあるんだけど・・・」

「フラットな状態でも80kgくらいまでなら余裕」

「ええ・・・」

「淳蔵と直治は多分壊れちゃうから、マゾの美代だけ」

「俺、だけ・・・」


とてつもない優越感。


「滅ッ茶苦茶、激しいよ。どうする?」

「・・・マゾの美代を滅茶苦茶に犯して、ブチ壊してください」


都はにっこり笑った。俺の尻の穴とペニスバンドにローションをたっぷりと塗り直し、挿入する。


「んおおっ・・・」

「私の肩に足を乗せて」

「は、はいぃ・・・」


俺は都の肩に足を乗せた。都が身体をぐっと近づける。ペニスバンドが深く挿入されて、異物感で苦しいはずなのに気持ち良い。都は俺の脇の下に腕を入れてしっかりと掴むと、軽々と俺を持ち上げた。


「ほら、軽いもんよ」

「ふか、深いっ、あああっ・・・!」

「存分に暴れていいからね、美代」


都は俺の身体を揺さぶり始めた。物凄い速さで尻にペニスバンドを叩きつけられ、息ができない。視界がガックンガックン揺れる。意識が飛ぶ寸前に、都が俺の身体をぼふんとベッドに叩きつけた。


「がはっ・・・。はぁ・・・、あぁあ・・・」

「ごめんごめん、初めてするからちょっと力加減間違えちゃった」

「ぎ・・・ぎもぢいい・・・」

「あら、良かったの?」

「もっどぉ・・・も、もっどぉ・・・」

「んー、息ができないのは流石にまずいから、もうちょっとゆっくりね」


都が俺を持ち上げる。さっきよりはゆっくり突かれて、俺はなんとか呼吸のタイミングを探した。カチッとパズルが噛み合うように呼吸のタイミングが合い、俺は吸って吐いてを繰り返す。


「はっ、はっ、はあ、あっ、んあ、あっ、あぐ、うぅ、んん」

「お、良い感じ」

「おッ、おお、んお、おあ、あッ、はあ、あう、あぅ、はあ」

「あは、おちんちんそんなに跳ねさせて、痛くないの?」

「すごッ、きも、ちいい、もっ、もっと、もっと、もっと」


都の肩に爪を立ててしまっているのに気が付いて、なんとか力を抜こうとしたが、身体が全く言うことを聞いてくれなかった。尻の穴の肉が強烈に収縮して、少しでも快楽を得ようと必死になっている。


「イけそう?」

「イッ、イキそうっ! イキそうッ!」

「だよね、ガチガチだもんね」

「ごめ、ごめん、なさいっ! イキます! イキます!」


別に責められているわけではないのに俺は何故か謝ってしまって、そのまま射精した。精液は俺の身体や都の胸を汚した。ぼふんとベッドに叩きつけられ、ずるずるとペニスバンドを抜かれる。それがまた気持ち良くて、俺は歯を食いしばった。


「ふぃー、これ結構体力使うねえ・・・」

「あふ・・・ふぅ・・・」

「美代、大丈夫?」


俺は頷いた。


「あらっ、そんなに良かったの? だッらしない顔・・・」


都は俺の頬をぺろりと舐めた。


「うーん、可愛い・・・」


都のふかふかでさらさらの手で、腹をすりすりと撫でられる。それが心地良くて、疲れもあって、俺は意識を手放した。


「んん・・・。んっ?」


ふわふわ。


「・・・なんだお前かよ」


うつ伏せになって腕を放り出して寝ていた俺の手の下にあったのは、ジャスミンの肩だった。こいつのせいで、俺は都と昼寝はしたことはあるものの、夜の同衾は成功していない。


「うーん・・・」


俺は白木の話を思い出していた。白い髪の美男。天使の言葉を操る。


「・・・どっちでもいいや」


悪魔には諸説あるんだ。神の一部だとか、元天使だとか。


「よしよし」


撫でてやる。ジャスミンはもぞもぞと寝返りを打って、仰向けになって寝始めた。


「・・・犬として、その寝相はどうかと思うぞ。番犬の誇りとか、肉食獣の本能とか、狼の子孫の血が疼くとか、ないのかよ」


ジャスミンはふしゅんとくしゃみをした。俺は苦笑して起き上がり、シャワーを浴びて服を着ると、リビングに向かった。都はやっぱりソファーで寝ていた。寝室に戻ってジャスミンから布団を剥ぎ取り、都にそっとかける。俺は対面のソファーで腕を組んで枕にして寝た。テーブル越しに見える都の寝顔は、やっぱり可愛い。


「うにゃあ・・・」

「ん?」


もしかして、俺が布団をかけた刺激で眠りが浅くなって寝言を言うのか?


「お、おゆるしください・・・。それだけは・・・」

「・・・なにを?」

「りょうみみどうじみみそうじ・・・」

「あはっ、なんだそれ」

「ごそごそいうの・・・こわい・・・」

「俺が守ってあげるよ」

「んん、あいがとう・・・」


都は穏やかな表情で、すよすよと寝息を立て始めた。


「・・・俺が守ってあげるから」


あんだけ鳴かされといて言うのも、なんだかな。俺は独り苦笑した。
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