三百六話 いつも通りの

文字数 1,984文字

都が『退院』してから、年末年始も関係なく見舞い客がやってきて、なにかと忙しかった。客は七割は上機嫌で、二割は顔を真っ青に、一割は顔を真っ赤にして帰っていった。

俺達の『いつも通り』の生活が戻ったのは、五月になってから。客が居ない日は兄弟で談話室に集まって会話をする。『肉』は九月に仕入れることで決まった。

今日は客が居ない。

都と千代と桜子も談話室に集まり、全員でアフタヌーンティーを楽しんでいる。


「・・・じゃあ、人間側がかなり優先だったんだ」


美代の言葉に都が頷く。『最悪の災厄』、『ハルマゲドン』が起こり、戦っている間、都は無我夢中だったので一年以上経過していただなんて気付きもしなかったらしい。


「あまりハッキリとは覚えていないけれどね。周りに動くモノが殆ど居なくなって、敵意を向けられていないと思ったら、疲れてそのまま落っこちちゃった」

「宇宙、から?」

「そ。月の近くまで行ったけど、玉兎が餅をついてたよ」


さらりとそんな冗談を言ってしまう都の強さに、強く惹かれるのがわかる。好き過ぎて頭がおかしくなりそうだ。

その日の夜、俺はどうしても我慢できなくなった。

久しぶりの『下準備』を念入りに、念入りに済ませて、都が俺と遊んでくれるように考えを巡らせて、引き出しの奥にしまってある赤い縄を取り出した。


「あ」


慌ててカーテンを閉めた。淳蔵も桜子も居ないのはわかっているが、ひやっとした。服を脱ぎ、下着の上から、蛇も使って自分の身体を縄で縛る。


「なにやってんだ、俺は」


間抜けで、必死で、笑ってしまう。

できた。

服を着直し、都に携帯でメッセージを送る。


『遊んでほしいです』


すぐに返事が来た。


『遊びましょう』


すぐに部屋に行き、ノックせず入った。


「一番乗りだね」


仕事机に頬杖を付いている都が、にやりと笑う。


「・・・駄目か?」

「一言も言ってないでしょ」

「ならよかった。折角『お洒落』して来たんだから」


都は問うように少し首を傾げる。俺はそっと、服を脱いだ。


「・・・そう、きたかぁ」


爛々と光る目に射抜かれる。俺が黙って寝室に行くと、都も早足で寝室に来た。ベッドに寝転ぼうとしている俺を強引に押し倒して覆い被さる。


「・・・はぁ、」


ドキドキした。都は酷く興奮していて、荒い息を吐いている。ぱたた、と俺の頬に、都から滴る汗が落ちる程に。ふわり。合わせた唇も震えている。俺は都の頭を抱え込んで、舌を誘った。いつもならねっとりと絡めて気分を高めるのに、都は一方的に俺の舌を吸った。


「うん、んっ・・・」


酸欠でくらくらする。


「ふあっ、は・・・」

「直治・・・」

「みやこ・・・、俺を、いじめて・・・」


都は静かに大きく息を吸ったあと、俺の右の乳首を思いっ切り摘まみ上げた。


「あああぁあッ!!」

「愛してる・・・。会いたかった、ずっと・・・」


ちゅ、ちゅ、と音を立てて首筋にキスを落とされ、首輪ごと下から上にべろりと舐め上げられる。それだけでもう意識が飛びそうになった。身を捩ると縄が擦れて、痛くて、気持ち良い。


「もっと、いじめてっ・・・!!」


血が出る程、肩に噛み付かれる。


「ああっうッ・・・!」


身体が都を思い出してきた。


「んおッ、お・・・!」


仰け反った喉にも噛み付かれる。


「いうっ、あっ・・・!」


自分の血のにおい。あちこち噛み付かれて痛いはずなのに、萎えるどころかイきそうになる。ああ、明日、淳蔵と美代になんて説明してやろう。桜子もだ。一年以上溜まった都の性欲が、今、俺にぶつけられている。


「ハハ、苦しそうだね。今、楽にしてあげるよ」


ビリビリと、都は俺の下着を破いた。そのままぱくりと咥えてじゅるじゅると吸い付かれる。


「あぎっ!? いぐっ!! ああああああぁ・・・!!」


久しぶりの刺激は強過ぎた。


「こっちはどうかな」


都は俺の精液を吐き出し、指に絡めると、尻の穴に挿入した。


「おッ! おっ、あぅ・・・」

「直治の『いいところ』は、ここだよね?」


こりこり。


「んああぁっ!! ぞ、ぞごやめっ、またでるぅ!!」

「温かい・・・。あは、生きている心地がするよ・・・」

「ま、まって、こりこりやめっ、ま、またイって・・・!」

「出てないけど、このうねりはイッてるんだよね?」

「イ、イっでまずぅ!」

「可愛い『雌』だね、直治」

「ひぐ、うううぅ・・・!!」


翌朝の朝食の時間は酷いものだった。俺の身体は噛み傷だらけで、尻も噛まれているので椅子の座るのも一苦労だ。美代の嫉妬からくる怒りは一周回って無表情になり、淳蔵も流石に機嫌が悪くなって物言いたげな目で都を見る。桜子はいずれ順番が回ってくればそれでいいのか、上機嫌になっていた。千代は呆れていた。


「美代、朝食のあとは夕食まで遊びましょう」

「わかりました」

「淳蔵は午後十時から、明日の朝まで」

「昼まで」

「そう? じゃあ昼食までね」


うまくまとまった、らしい。

本当に、やっと、いつも通りの日々が戻ってきた。
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