七十九話 疑似〇精1

文字数 2,442文字

「愛美さん」

「なんでふか?」

「これで三度目の注意よ。口に物を入れたまま喋らない、口を開けて食事をしない。食器をカンカン鳴らさない」

「・・・すみません、気を付けまふ」

「いいえ、今後、食事は自室で摂ってちょうだい。千代さん、愛美さんの食事を部屋に運んで」

「は、はい」


愛美が都を怒らせた。一ヵ月が経ったが、愛美は未だに物覚えが悪い。病気のせいで覚えられない可能性が大いにあるが、元々仕事をする気が無いようにも見える。アク抜きの四ヵ月間で統合失調症の薬も体内から抜くつもりだが、その間、病魔が猛威を振るう愛美を相手にしなければいけないと思うと、今からげんなりしている。

こんこん。都の部屋のドアをノックする。


『どうぞ』


今日も『下準備』を済ませてから来るように言われている。


「おお、待っておったぞ、村一番の美貌を持つ生娘よ」

「処女なら都に捧げただろ・・・」

「でもさぁ、中出しされたことないでしょ?」

「はあ?」


都は左手に持っている透明なペニスバンドを俺に見せると、右手に持っているボタンをカチッと押した。透明な液体がピュッと飛び出てカーペットを濡らす。


「な・・・」

「一般的な男性の射精量が3.5mlなんだって。これ、100ml入るの。で、射出量も3.5ml、15ml、30ml、50ml、80ml、100ml選べるの。ローションとか小麦粉溶かした液体を入れると詰まりやすいらしいから、お湯。どう? まずはごっくんしてみませんか?」

「勘弁してくれ・・・」

「15ml、いってみよう!」

「変態おじさんめ・・・」

「でへへ」


都が服を脱ぎ、ピンクの可愛らしい下着を晒す。その上にペニスバンドを装着して、ベッドに腰掛けて足を開いた。俺は都の足の間に跪き、身を屈めてペニスバンドをしゃぶる。


「ん・・・」

「お湯に漬けて温めておいたんだけど、どう?」

「・・・咥えてるだけで、気持ち良い」

「そいつぁ良かった」


温かい。体温より少し熱いくらいに温めているのだろうか。都の熱だと脳が錯覚してしまう。都がいつも俺にしてくれるのと同じように、舌を広げて舐め上げて、歯が当たらないように吸い付きながら頭を前後させる。くらくらした。


「んっ、ん、ふ、ふぅ・・・」


ああ、これが本物だったら。


「直治、出すよ」


カチッ、と音がして、俺の口の中にお湯が流れ込んだ。しゃぶるのに夢中になっていたので咽て吐き出してしまった。


「あらあら、ごめんね。大丈夫?」

「ゲホッゲホッ、はあっ、はあっ、み、都っ・・・」

「うん?」

「・・・次、30。いや50で」


都は牙を見せて笑った。俺は再びしゃぶり始める。熱い。クセになりそうだ。気持ち良い。凄く気持ち良い。こんなの、尻に入れられて、射精するみたいにお湯を出されたら。そう考えるだけで狂いそうになる程、気持ち良くて、目がちかちかして霞む。


「直治」


駄目だ。まだ楽しみたい。都の綺麗な目を見て、抗議の意を示す。


「明日も仕事があるでしょ」

「んんん」

「だーめー。ほら、出すから飲んでね」


カチッ、俺は慌てて舌を裏返して喉を守り、口の中にお湯を貯めた。全て出終わったのを確認してから、ゆっくりと飲む。


「ちょっと多かったかな? お尻も50にしとこうか?」

「うん・・・」

「お湯作るから、ベッドに寝転んで待ってて」


俺は言われた通り、ベッドに寝転んで都を見る。ポットのお湯と水差しの水を大きなマグカップに入れて熱さを調節しているらしい。温度計で細かく温度を測っていた。それをシリンジで吸い上げると、チューブをシリンジとペニスバンドの根元に装着して、お湯を充填していた。


「はい、お待たせ」

「早く、早く・・・」


都がローションをペニスバンドに塗る。そして俺の尻に挿入した。


「ああッ!? あっつ・・・!!」

「あっ、ごめん。熱かった?」


都がペニスバンドを抜こうとしたので、俺は腕を掴んで引き留めた。


「良いっ! これ良いっ! 気持ち良い!」

「お? じゃあ直治の射精のタイミングでこっちも出すからね」


都は俺の腰を持って身体を引き摺り上げ、尻の穴を天井に向けさせると突き刺すようにペニスバンドを挿入した。ガンガンと突かれ、ベッドのスプリングが馬鹿みたいに軋む。


「くああっ!? あうっ!! おおおっ!! あああああああっ!!」

「あはっ、直治、毎日柔軟してるからこの体位でもイけるかなと思ったけど、イけそうだね」


恥ずかしい。物凄く屈辱的だ。なのに、気持ち良くて仕方がない。


「あづい!! ああああ!! あづいいいいい!!」

「苦しいの? やめる?」

「だめだめだめ!! いぎぞうっ!! も、もうずごじっ!!」


熱い。いつもは無機質に俺の身体の肉を蹂躙する塊が、今日は発情した都と同じ温度を持って俺の身体を攻める。まるで本物に犯されているみたいだ。でも、俺の目の前では都の大きな白い胸が揺れていて、わけがわからなくなる。


「ああっ!! いぐっ!! いっ、いぐぅ!!」


びゅる、と精液が飛び出て俺の胸の周りを汚した。それと同時に、カチッ、と都がスイッチを押した音が聞こえた。


「あっ!?」


熱いものが身体の中に満ちた。ぐわっと体温が上がったような気がする。都が俺の尻からペニスバンドを抜いて、身体を解放する。俺はベッドの上で潰れかけの蛙みたいに身体を痙攣させた。血液の中に快楽が混じり込んで、身体を動かすことができない。ぽわんと眠くなって、俺は意識を手放した。


「・・・ん、あれ?」


気が付いたら朝になっていた。都は隣で寝ている。時計を見る。六時二十四分。


「や、やばっ!!」


千代達の出勤時間は七時だ。その前に俺は事務室に行かなければいけない。慌ててシャワーを浴びて、歯磨きをするかどうか五秒迷って諦めて、服を着て都の部屋を飛び出た。六時三十七分。間に合った。

こんこん。


「どうぞ」

『失礼しまァす!』


四十五分に千代が出勤してきて、五十五分に愛美が出勤してきた。


「ふーっ・・・」


俺は臍の下をおさえる。


「う、まだ熱い・・・」


毎回は、駄目だ。クセになる。


「淳蔵と美代に忠告してやるか・・・」
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