百三十七話 匣

文字数 1,807文字

「淳蔵ちゃん、今日はこれ着けましょ」


目隠しと、鎖で繋がった首輪と手枷。


「ほら、手を出して」

「ん・・・」


両手を差し出すと、くっつけるように枷を嵌められる。首輪も嵌めると、拘束されている緊張感で興奮してきた。変態だ、俺。


「さ、目隠ししましょうね」


目の前が真っ暗になる。息が勝手に荒くなる。


「寝転んで」


言われた通りにする。都はふかふかでつるつるの手の平で、俺の身体を撫で始めた。さりさり、とも、しゅりしゅり、とも聞こえる音がする。


「ふ、うう・・・」

「五感の一つを奪うだけで、他の感覚が敏感になるなんて、生き物の身体ってうまくできてるわよねえ」

「ふう・・・、ふう・・・」

「触ってもないのに、淳蔵のおちんちん、ぴくぴくしながら勃起してるけど、気持ち良いの?」

「き、気持ち良い・・・です・・・」

「そう」


都が俺の男根を手で掴んで、くにくにと揉む。


「んっ、んっ・・・」

「綺麗な髪ね、淳蔵」


びくっ、と身体が反応した。


「フフッ、髪が性感帯の男なんて、聞いたことないわよ」

「ち、違う。み、都だけだっ。他のヤツに褒め、られても、う、嬉しくない、んんっ」

「あら、嬉しい」


ひやり、とした感触が亀頭に流れた。


「うあっ!?」

「ローションよ。ちょっと冷やしてあるの」


冷たいローションをとろとろと垂らされて、俺は完全に勃起する。都が俺の男根をゆっくりと、そして、次第に激しくしごきだした。


「あっ・・・! んっ、んっ! んんんっ!」

「気持ち良い?」

「良いっ! 凄く良い!」

「素直で良い子ね。ほら、ご褒美に射精させてあげる」


都は片手で根元をしごきあげながら、先端を舌でれろれろと舐める。


「うあッ!? ああっ、そ、それすぐイッ、イく! うううっ!」


俺の身体がつむじからつま先まで、快楽でぴんと張る。ガチッと鎖が鳴って、首と手がお互いに引っ張り合って、縛られているという事実を嫌でも認識させられて、余計に興奮した。


「さて、と」

「うわッ!?」


視界を塞がれた状態で抱き上げられ、身体がぐるんと回転する。ぼふっ、と枕であろうものに顔から突っ込み、尻を突き出すように腰を持ち上げられる。俺は顔を横にして、呼吸する方法を確保した。

にゅる。

尻の穴を舐められる。俺はこれが一番弱い。


「あンッ! あぅ」


にゅろにゅろ、ぐちゅりぐちゅり、ちゅるちゅる。

舐められ、舌を突き刺され、吸われる。

都が俺の尻の肉を掴んで拡げる。調教されて拡がりやすくなっている穴は、すぐに柔らかくなる。

つぷ。


「ひァッ!?」


中に、舌が入ってきた。


「み、みやこっ、だ、だめっ! き、汚いからっ!」


舌が回転して、俺の身体を味わう。


「や、やだっ、やめてっ! そ、そんなことしちゃだめっ、あうぅ、ふっ、んんんっ!」


いくら俺達が病原菌や毒に耐性があるからって、快楽を与えるために尻の穴の中に舌を入れて、中をべろべろ舐め回すなんて、正気の沙汰じゃない。そんなことされてガチガチに勃起して、情けなく喘いでいる俺も頭がおかしい。


「ひゥッ!? んああっ! う、うそ、い、イくっ、イ、イっちま、あっ!」


尻の穴の中を舐められただけで、俺は呆気なく射精してしまった。

ちゅぽ。

舌が抜かれる。


「ふう、興奮してきちゃった・・・」

「あっ、冷たっ・・・」


ローションを垂らして塗り込まれる。くる。挿入される。


「は、は、あっ、ぁああぁああっ!」


いきなり激しく責められる。


「は、はげしっ、ああ! そんなにっ、そんなにされたら、こわれちゃうっ!」

「壊れたら綺麗な匣に詰めて、毎日ずうっと眺めてあげるよ」

「そ、そんなことっ、おおっ」


そんなことされたら、幸せ過ぎて、死んでしまう。


「綺麗な黒髪が映えるように、甘いにおいのする白い花で包んで、毎日毎日、淳蔵だけを見つめてあげる」

「・・・して」

「なあに?」

「こわしてっ! おれのことこわしてっ!」

「フフ、駄目だよ」


壊してほしい。

都。

壊してほしい。

壊して・・・。


「・・・んぅ」


陽の光が目を射抜いて、飛んでいた意識が戻った。目の前にはジャスミンの間抜けな顔。俺は都のベッドから起き上がり、風呂場に行ってシャワーを浴びる。脱ぎ散らかした服を着てリビング兼仕事部屋に行くと、都はソファーに座って紅茶を飲んでいた。


「おはよう」

「お、おはようございます・・・」


昨夜の痴態を思い出して恥ずかしくなって、俺は目を逸らす。


「また来ます・・・」

「毎日でもどうぞ」


嬉しい。こころの底から。俺は満ち足りた気持ちで、都の部屋を出た。
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