二百三十話 拘束具2

文字数 2,550文字

「な、なんだこれ・・・」


都の寝室。大きなベッドが片付けられて、部屋の中央に謎の拘束具が設置されていた。


「ちょっと大人しくしててほしいの。男は『けだもの』だからね」

「・・・すみません」


数え切れない程心当たりがあるので、俺はつい謝ってしまった。


「これ、どうやって縛られるんだ?」

「男の直治には縁が無いものよねえ」

「な、なんだよ・・・」

「婦人科で使う診察台よ」

「な・・・そ、そん、な、ものを俺に・・・」

「嫌ならいいわ。私の睡眠時間が長くなるだけだから」

「・・・やります」


俺は服を脱ぎ、そっと、診察台に座った。


「そう、ここに足を乗せて」


診察しやすいようになのか、股が大きく開く構造になっている。


「手はここに乗せて」


顔の横にある台に手を乗せる。都はベルトを二つ使って腕を固定した。


「都・・・」

「うん?」


腕と同じく、ベルトを二つ使って足を固定している都に問いかける。


「診察するだけなんだから、拘束は必要無い、んじゃないか・・・?」

「バレちゃった?」


悪びれる様子もなく言うので、怒りを通り越して呆れてしまう。


「倒すよ」

「えっ?」


診察台の傍にある機械を都が弄ると、椅子がゆっくりと後ろに倒れ始めた。これじゃ丸見えだ。羞恥で頭がどうにかなりそうだ。殆ど仰向けになった俺の足の間に都が立ち、俺の顔を覗き込むように僅かに上体を倒す。


「直治、左手をぎゅっと握りしめて」

「はい・・・」


言われた通りに左手を握る。都がにこっと笑って二度頷くと、黒い瞳がトルマリン色にかわった。ガクン、と身体が揺れたが、錯覚だったのか、拘束具は軋む音を立てなかった。バッと俺の左手が勢いよく開かれる。


「あっ!? い、今のは、」

「どうして手を開いているの?」

「あっ、す、すみません!」


慌てて左手を握ろうとしたが、力は入っているのに、指が全く曲がらない。


「握って」


都が言うと、俺の言うことは全く聞かなかった左手がぎゅっと握りしめられる。


「開いて」


バッと開く。


「握って」


ぎゅっと握りしめられる。


「どういう意味か、わかる?」

「・・・こんなことしなくたって、都の言うことならなんでも、」

「あら? そうじゃなくて。怖いでしょう、私が」


都はなんの表情も浮かべていない。俺は鼻で笑って馬鹿にした。


「・・・どうして? 怖くないの?」

「忠誠心を試したいのか? 焼き鏝でも持ってきたらどうだ」


都はゆっくりと大きく目を見開いたあと、意地の悪い笑みを浮かべ、俺の足の間から離れていった。一瞬、本当に焼き鏝を持ってくるのかと心臓が冷えたが、都が持ってきたのは透明な液体が入った大きな瓶だった。


「素敵な身体・・・」


しゅるしゅると腹筋を撫でられ、臍に中指をひっかけられる。


「これが私のものだと思うと・・・」


都は形の良い手で俺の男根を握って、しごき始めた。


「うっ、んんっ・・・。そ、その瓶、なにが入って、あっ・・・」

「あとのお楽しみ」

「ああっ、絶対碌なモンじゃねえっ・・・」

「直治、射精しちゃ駄目よ」


俺は意味を理解して、焦る。


「そっ、そんな無茶なこと、」

「できないの?」


俺は自分の発言に責任を持つため、首を横に振った。


「できなくてもいいのよ。私には関係無い。力で捻じ伏せて従わせるだけだから」

「そんなっ・・・突き放すようなこと・・・」

「ん、ちょっと萎えちゃったか。『コレ』は勃たせないと使えないんだよね」


都が俺の男根から手を放し、ぱちん、と指を鳴らす。右手を拘束していた二つのベルトが同時に外れた。


「自分で乳首を弄りなさい」

「は、はい・・・」


都は再び男根をしごき始める。俺はやけくそになって、乳首を弄り倒した。


「あぁっ! う、うぅん!」

「良い子ね、直治」


あっという間にイきそうになる。


「みやっ、あぁあ! い、イきそ、」


射精しないように乳首から放そうとした指が、俺の意志ではない力で乳首を潰す。都の手も動きを止めない。


「あっ! あぁあ! ゆ、ゆるし、ああああああっ!!」


するん、と都の指も俺の指も放れていく。都は瓶の蓋を開け、中の液体を手で掬った。ぷるぷると震えている。敏感になっている男根に、そっと、塗り込まれる。


「・・・び、びやく?」

「すぐにわかるよ」


体感、一分。液体が硬くなるのを感じた。


「か、硬くなってる・・・」

「そう。型を取ってるの」

「な、なんで、そんなこと・・・?」

「そりゃあ『コレクション』にするからですよ。バイブレーション機能もつけられるし、直治が望むなら自分に犯される感覚を教えてあげてもいいよ」


俺が股座に手を伸ばして無理やり剥がし取るより先に、都が俺の腕を掴んだ。


「やると思った」

「ふッざけんなこの変態!!」

「ほら、舌を突き出して。しゃぶってあげる」


俺は都を精一杯睨んだあと、舌を突き出した。


「もっとよ」


限界まで舌を出す。都は掴んだ俺の手を乳首に添えると、股座から離れて俺の隣に立ち、俺の舌をちゅうちゅうと吸い、くるくると絡め、唇で優しく挟んで顔を上下させる。舌が凄く気持ち良い。イけないからつらいだけだとわかっているのに、自由になった右手で乳首を弄り回して、身体を震わせた。


「そろそろ固まったかな」


液体は硬化して、ゴムのようになっていた。ぎゅ、ぎゅ、とゴム越しに握られて、射精できない身体が敏感に反応する。最早拷問だ。都がゆっくりと、ゴムを抜き始めた。痛みを覚悟したが、意外にもすぽっと抜けて、解放感から息を深く吐いた。


「よしよし、良い感じ。さ、我慢した分、今日はいっぱい射精していいからね」


型を取ったゴムを引き出しに入れ、戻ってくると、男根に手を伸ばし、くにくにと揉んだあと、しごき始める。そして、俺の乳首をぺろぺろ舐めると、ぢゅうっと吸い付いた。俺は身体を仰け反らせて、言葉にならない喘ぎ声を上げながら、絶頂を迎えた。


「直治、本番はこれからよ」


都は『クスコ』を取り出した。


「これはなにか知ってる?」

「直腸の、内診に使う・・・」

「フフッ、直治の身体の中がどんな色をしているのか、乳首を弄られたらどんなふうにうねるのか、見せてね?」

「・・・クソド変態が」


目も唇も三日月のように笑う都を見ても、何故だか、拒否しようという考えがわかない。俺の足の間に移動した都が、真っ直ぐ見つめてくる。恥じらいとささやかな抵抗を表現するために、目を閉じて顔を逸らすのが精一杯だった。
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