百九十九話 取り引き

文字数 2,063文字

こんこん。


『どうぞ』


俺は都の部屋に入り、鍵をかけた。


「あら、直治。どうしたの?」

「取り引きをしに来た」

「・・・ふうん」


都は仕事をする手を止め、椅子を引いて立ち上がると、俺の前まで真っ直ぐ歩いて来て、腕を組んで俺の顔を見上げた。


「なにかしら?」

「なにか隠してるだろ?」

「さて、なんでしょう?」

「錬金術が、どうのこうの」

「それで? そっちの手札は?」

「俺の身体」


都は呆れたような、馬鹿にしたような笑いを浮かべて、短く息を吐いた。


「授乳手コキって知ってるよね?」

「・・・ご褒美なんだが」

「馬鹿ね。私が吸うのよ」


俺は拳を握りしめ、唇を結び、羞恥を必死に堪えた。


「・・・わかった」

「ベッドへどうぞ」


寝室へ移動し、服を脱ぐ。ベッドに腰掛けて右足を組んで待っていると、色気のない灰色の下着姿になった都がペニスバンドを装着して、棚からローションを取り出すと俺に手渡し、組んだ右足の上に枕を乗せ、寝転んだ。俺は都の頭をそっと抱える。


「始めて」


ペニスバンドにローションを垂らし、手でしごく。


「んんー、えっちねえ」

「・・・なにを隠してるんだよ」

「まーたジャスミンがお節介を焼いたのかね。ま、いいけど・・・」


都は人差し指と親指で輪を作ると、俺の左の乳首をぴんと弾いた。


「ああッう!」

「続けて」

「は、はい・・・」


ぬちゅぬちゅと音が鳴る。


「・・・それだけ?」

「そ、それだけって・・・」

「手を上下に動かしてるだけじゃないの。私がしてあげる時って、そんなだったかなあ?」

「う・・・」


恥ずかしい。緩急を付けたり、先端を撫で回したり、くにくにと揉んだり。都は俺の乳首に吸い付き、手の動きに舌の動きを連動させる。


「はあッ、あ、うう・・・」


ぢゅうう、と強烈に乳首を吸われる。


「うぅう・・・! ンなっ、吸ったって、出ねえよぉっ・・・!」

「フフッ、直治だって『吸っても出ないよ』って言ってるのに、ちゅうちゅう吸ってたじゃないの」

「そっ、それはそうだけど・・・、あっ・・・」

「もっと乳首虐めてほしい?」


俺の返答を待たず、都が噛み千切るように右の乳首を右に引っ張り、左の乳首を左に抓り上げる。


「あぁあああっ!!」


身体が勝手にがくがくと震える。都は乳首を放すと、ねっとりと舐め上げ、こりこりと引っ掻く。


「それとも、こんなふうに弄られたいと思いながらしごいてる?」


恥ずかし過ぎる。なにも言えなくて黙り込むと、都は俺の両肩を強く押して仰向けに倒した。ちゅるん、としごいていた手が抜ける。呆気にとられる俺に都は素早く覆い被さり、鋭い視線で俺の目を射抜いた。


「答えねえの?」


捕食、される。

そう思った。それと同時に、

捕食されたい。

と思った。


「お、お尻に、ブチ込んで、掻き回して、ください・・・」


都は片眉を上げて薄く笑うと、俺の首筋に顔をうずめて、ねっとりと、頬まで舐め上げる。


「どうすればいいか、わかるよね?」

「はい・・・」


都が身体を離すと、熱気まで離れていった。俺は一度深呼吸をしてから起き上がり、ベッドに上半身を凭れかけて、尻を突き出す。


「あっ!?」


滅多に触られない睾丸に優しく吸い付かれ、手で弄ばれる。


「ふっ、うう・・・」


溶けるように気持ち良い。意識が飛びそうになる。


「んぅ、はあ・・・」


会陰をちろちろ舐められて、身体がぴくぴくと震える。


「直治」

「はい・・・」

「お尻の穴、舐めてほしい?」


俺はシーツを握りしめた。どうしていつも俺を辱めるんだろう。どうしていつも俺は抗えないんだろう。


「舐めて、ください」


ぐちゅう、と熱くて柔らかくてぬめぬめした舌が尻の穴に突き刺さる。


「あぁあっ」


ぐいぐいと中に入ってきて、俺の粘膜を舐め回す。勝手にきゅうきゅう締まる穴を手で拡げられて、恥ずかしくて、気持ち良くて、恥ずかし過ぎて、気持ち良過ぎて、視界がちかちかと点滅した。にゅる、と舌が抜けていく。


「白い肌が真っ赤になって、綺麗ね、直治・・・」


つつ、と背中を指で撫でられる。


「あっ、ああっ」

「挿れるよ」


逃げる腰を掴まれて、挿入される。そのままゴンゴンと突かれる。


「あぁ! ああぁあ! は、はげし、」

「ああ、話を聞きに来たんだったね?」

「いぃ、いまは無理ィ! いまはむりぃっ!」

「そう?」


ゴンッと突いたあと、身体を密着させ、字を書くようにぬちょぬちょと腰を振られる。


「おお、おおぉ・・・」

「で、話なんだけど、」

「む、むりぃ・・・」

「そう?」


それから、計四回。尻も男根も乳首も頭がおかしくなるほど虐められ、射精させられた。


「限界かな?」


都も息が上がっている。ぬち、と小さな音を立てて、尻からペニスバンドが抜かれた。途端に身体の力が抜けて、俺はベッドに凭れ掛かりながら荒く息を吐く。


「で? いつ話を聞いてくれるのかな?」

「ん、はぁ・・・。き、聞きます・・・」


都が俺の耳に唇を寄せ、囁く。


「・・・え、は? なんだって?」

「直治、二人だけの秘密よ?」

「あ、はい、わかりました・・・」

「フフッ、哀れよねえ」


都は汗で張り付いた髪を掻き上げながら、言った。


「『生理食塩水』みたいなモンのために必死になっちゃってさ」
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