九十三話 軍服

文字数 1,990文字

こんこん。


『どうぞ』


俺は部屋に入り、鍵をかけた。寝室で出迎えた都は、10cm以上あるブーツを履いて、紺色の軍服を着ていた。都は俺を見下ろす。軍帽の下で都の瞳が輝いていた。


「あ・・・あ・・・」

「もう勃起してるの?」

「は、はい・・・」

「鞭で打たれたいんだったね」

「お、お願いします・・・」


都が俺の顎を掬い上げてキスをする。こころも身体も喜んでそれを受け入れた。女になった気分だ。都の女。最高の気分だ。暫くキスを楽しんだあと、俺は服を脱いで自ら手を差し出し、枷を嵌めてもらった。ベッドに凭れ掛かる形で背中と尻を晒す。


「美代」

「はいっ」

「それじゃ折角の衣装が見えないでしょ」

「え、あ・・・。で、でも」

「良いモノあるんだ」


都は俺の対面にホワイトボードのようなモノを運んできて、くるん、とそれを回転させた。ぽかんとしている全裸の俺と、軍服を着た都が映っている。


「か、鏡?」

「昔、作らせたおもちゃ。こういうこともできるの」


鏡の上下の位置を移動させる。


「どう? よく見える?」

「うん・・・」

「じゃ、舌を噛まないように開口器具つけようか。滅茶苦茶に叩いてあげるから、楽しんでね」

「は、はいっ!」


俺は銀色の茨のような開口器具を取り付けられた。我ながら見ているだけで痛々しくて、間抜けだ。口が開きっぱなしになり、喉が渇く。俺は何度も舌を持ち上げて、唾液を喉に流し込んで渇きを潤そうとした。都は乗馬用の鞭のようなものを右手に持つと、思いっきり振りかぶった。


「あああぁああぁああぁぁあああッ!!」


背中に強烈な熱を持った痛みが走る。


「あぁあ・・・。ひぁこぉ・・・」

「痛い? もうやめる?」


俺は首を横に振った。唾液が飛び散る。


「おっと、何回叩いたか数えるんだった。いーち」

「はあっ、はあっ、はあっ・・・。あああぁあああぁあぁッ!!」

「にーい」

「あっ、あっ、あうッああああああッ!!」

「さーん。美代、最高記録は七回だよ。頑張って十回、いってみよう」

「あ、あいぃ・・・」


鏡に映る都は、凄く攻撃的な表情をしていて、でも俺を見る瞳には愛情が溢れていて。


「あがあああああああああああああッ!!」

「よーん」

「はぎっ、はぎぃぃ・・・。あぁあぁあぁあぁあぁっ!!」

「ごーお」

『ろーく』

『なーな』

『あれ、美代、意識ある? みーよー?』

「んん・・・。うッ」


背中にビリビリとした痛みを感じて、俺は目が覚めた。開口器具は取られていて、手枷もない。


「ああ、美代。おはよう」

「お、おはようございます・・・」

「何回目から意識無くなった?」

「・・・七回?」

「うーん、七回の壁は超えられないかぁ」


都はくすくす笑って、手になにかを塗り広げている。ローションではない。


「あ、これ? アロエのジェルだよ。美代の綺麗な身体に傷が残らないよう、ちゃんとケアしないとね」


そっと、都が俺の背中に触れる。腫れた皮膚を触られる痛みと、ジェルが染みる痛みで、ビリビリする。それが、気持ち良い。


「・・・都の手、ふわふわしてて気持ち良い」

「ジェル、冷たくない?」

「うん・・・。あったかくて気持ち良いよ」


都はいつも、手の平でジェルを温めるような気遣いをしてくれる。嬉しい。


「・・・みやこぉ」

「なあに?」

「前にも、塗ってほしい・・・」

「あらら」


都はたっぷりとアロエジェルを手に取って手の平で捏ねると、俺の男根を両手で握ってしごき始めた。ローションとは違う、サラサラとしたジェルの感触が気持ち良い。


「は、はあ、はっ、ああ・・・」

「イけそう?」

「ああ、あ、ちょっと、無理かも・・・」

「イけなくても、美代が満足するまでしてあげるから、ね?」

「うん・・・」


鞭打ちされた身体からは体力も気力も無くなっている。ゆるゆると勃起した男根を、都がアロエジェルを足しながらにゅこにゅことしごきあげる。


「き、きもちい・・・」

「可愛かったよ、美代」

「ありがとう・・・。うれしいよ・・・。ん、んんっ・・・」


滴るような射精をした。


「美代、疲れたでしょう? 一緒に寝ようか」

「はい・・・」


都がベッドの上で仰向けになり、俺は都の上に倒れるようにして寝転がった。うつ伏せで寝ないと背中がつらい。胸を枕にしたかったが窒息しそうになったので、身体を少し上にずらして首の下に挟んだ。


「美代、明日から三日間、暇を出します」

「えっ」

「本当なら一週間くらい休ませたいところだけど、貴方から完璧に仕事を取り上げたら、『手伝いだから』とか言って淳蔵か直治のところに押しかけそうだし・・・」

「よ、読まれている・・・」

「食事にも無理して顔を出さなくていいからね」


都は俺の額に唇を寄せる。


「ねえ、淳蔵と直治はどんなコスチュームを選んだの?」

「まだ遊んでないから、秘密」

「えー?」

「本人から聞きなさい。まあ、直治は喋らないかもしれないけど・・・」

「ええ・・・。あのむっつりすけべ、どんなお願いをしたんだ・・・」

「フフフ、さあね?」
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