二百四十五話 綱引き
文字数 2,845文字
『下準備』を済ませた俺は、シャワーを浴びて都の寝室に戻った。
「直治、ゲームしない? 勝ったら相手に一つ、なんでも命令できるというのはどう?」
「・・・なんでも?」
「そう。なんでも」
「『来る日』がなんなのか、教えてくれるのか?」
都はにやりと笑った。
「いいよ。私が勝ったらフィストファックさせてね」
「う、わ、わかった・・・」
都は服を脱ぎ、ブラジャーも外す。白い肌に食い込む黒い下着とガーターベルトに身体が勝手に興奮してしまう。ベッドの上で向かい合って座るように促され、俺がその通りにすると、都は大きな乳房を両手で持って、寄せ合わせた。
「勃たせて。舐めちゃ駄目よ」
珍しい誘い方だ。俺は頷き、愛撫を始めた。
「ふ、うう」
「声を殺すな」
「んんっ、やなこった」
「強情なヤツめ」
愛撫を続け、都の乳首が完全に勃起したところで、俺は手を放した。
「フフッ、さてさて・・・」
「次は俺の番か・・・」
俺が都にしたのと同じように、愛撫される。俺は声をおさえられない。
「うッ、んんっ! ひッ、うう・・・!」
「辛抱強い性格なのに、快楽には弱いのね」
「みやこのっ、せいだろぉっ・・・!」
「さあ、直治。『綱引き』をしましょうね」
「つ、つなひき・・・?」
都は俺の乳首から手を放すと、チェーンの両端にニップルクランプが付いた物を取り出した。
「乳首からおもちゃが二つとも取れたら負けよ。ネジで締め付ける強さを調節できるから、負けたくないなら、わかるよね?」
「そ、そんな、俺が圧倒的に不利じゃねえかっ!」
「フフッ、自分で言っちゃうんだ。でもそうよね、だから、私が先にコレを付けるよ。どう?」
「・・・わ、わかったよ」
都は自分の乳首におもちゃを嵌めて、ギリギリとネジを締める。つらそうに片目と唇を歪めている。
「お、おい、痛いんだろ? 無茶するなよ?」
「男に二言はない」
「女だろうが・・・」
もう一つ、嵌める。乳首は痛々しく変形していて、都は少し息を荒げていた。チェーンはあまり長くないので、都が俺に身体を近付けて余裕を持たせる。俺はおもちゃを手に持つと、鼻から深く長く息を吐いたあと、おもちゃを嵌め、ネジを締めた。
「ひぎっ、いいぃいぃい・・・!」
「そんなにしたら血が出ちゃうよ?」
「うぅ、うるさっ、あああっ・・・」
一つ付けただけで、身体がガクガクと震える。絶対に負けない。負けるもんか。『来る日』がなんなのか聞き出してやる。
「おお、偉い偉い。二つとも自分で付けられたね」
「あっ・・・はぁあ・・・」
「直治、自分から引っ張らないと、加減ができなくてつらいよ?」
「わ、わかって、」
「わかってるならいいの。じゃあ、」
ぐぐぐっと都が身体を後ろに傾けた。大きな乳房が伸びる。
「ああぁああぁああああッ!!」
「ほ、ほら、直治! 仰け反ってないで引っ張りなさい!」
「あぐっ!! うぅう!! んんぅ!!」
俺はどうすることもできない。どこかを掴みそうになる手を空中で漂わせて、目がちかちかするのを必死に耐える。痛くて、気持ち良くて、この状況に興奮して、頭が、頭がおかしくなる。都が俺の腹を蹴るように足の裏で押して、どんどんお互いの身体を離そうとする。
「直治っ! 勝ちたくないのっ!?」
「まっ、まけないいぃいっ!!」
「あはっ! その調子その調子!」
じりじりと俺は身体を後退させる。ばちんっ、と音がして、都の乳首からおもちゃが一つ外れた。都が、まずい、という顔をした。俺が油断したのがいけなかった。ばちんっ、と再び音がして、俺の乳首からおもちゃが取れてしまった。
『あっ』
声が重なる。俺はそのまま後ろに倒れ込んだ。二人で荒い息をする。都が俺の顔を覗き込む。
「引き分け、かあ。フフッ、予想外だ」
「も、もう一回・・・」
「ええ? もう一回するの?」
「勝つまでやる・・・」
「・・・もう。仕方がないなあ。ちょっとだけ、教えてあげる」
都はどこか寂しそうに、少しだけ笑った。
「直治」
都の瞳が、七色に輝く。
「私が死んだら、悲しい?」
身体が、動かない。
「私は、直治が死んだら、悲しい」
都は優しい表情をする。
「淳蔵が、美代が、千代さんが、桜子さんが、なにをしてくれても、私は私じゃいられなくなる」
慈しむように、俺の頬を撫でる。
「大丈夫だよ」
灯りを落とした暗い部屋。都の瞳が眩しい程、発光し始める。
「誰も死なせない」
ぎらぎら、ぎらぎら。
「私は死なない」
都がゆっくりと瞬くと、瞳が、元に戻った。
「さて、」
ぐいっ、と都がチェーンを引っ張る。冗談や洒落ではなく、本当に乳首が千切れてしまう。
「いぃいいぃいッ!?」
「『勝つまでやる』なんて我儘言う子に付き合ってあげたんだから、直治も私の我儘を聞くべきじゃない?」
「うう、う・・・」
「濁った声で下品に喘ぐ姿が見たいな」
「わ、わかり、ました・・・」
翌日。朝食の時間。
「あら? 皆さん、どうされました?」
3Q太郎は都と俺を交互に見て、ガチガチに緊張し、顔を赤くすると少し身を屈めた。
「へぅ! へ、変な夢を見まして」
「あら、早速ですか? どのような夢でしたの?」
「と、とても怖い夢でした! 動画のネタバレになっちゃいますから、お話することはできないんですけど!」
「ウフフ、楽しみにしていますね」
「あは、ははは・・・」
傾国の美女と筋肉しか取り柄のないような男がいやらしいゲームを始めたと思ったら、ヒンヒン喘いでいるのは男の方で、張形をつけた女に尻の穴を穿り返されて、獣のように吠えながらも涎を垂らしてだらしなく笑っている姿を見たら、誰だって困惑するだろう。無理はない。
食事が終わり、事務室に戻る。暫くすると、3Q太郎が訪ねてきた。
「直治さん、おはようございます」
リーダーの幸太郎に続いて、啓太郎と竜太郎も挨拶をする。
「おはようございます。なにかご用で?」
「はい。取材を、と思いまして」
「どうぞ」
カメラが回る。
「Nさん、昨日は夢を見ましたか?」
名を伏せるために『Nさん』と呼ぶことにしたらしい。
「いいえ。昨夜は社長と『ゲーム』をして、夜遅くまで起きていたので」
「えっ!?」
全員、吃驚している。
「あの、どんなゲームを?」
「綱引きを」
「つ、綱引き・・・?」
インタビュアーの幸太郎が、初めて知った単語を繰り返して覚えるように言う。
「ああ見えて子供っぽいところがありましてね。この館に住み着いている『なにか』は、社長のそんなところを気に入っているのかもしれません」
「『なにか』とは、なんですか?」
「さあ? 俺は見たことがないんですけれど、お客様やメイド達から聞いた話では・・・」
全身真っ白の大きな『なにか』が館を徘徊している、という話を簡潔に伝えると、3Q太郎は喜んだ。俺はジャスミンの話をしているので、嘘は言っていない。3Q太郎は取材を終えると、丁寧に礼を言ってから、事務室を出ていった。
「ふん、馬鹿共め・・・」
ちく、と服の中で絆創膏が擦れた。腫れあがった乳首をおさえるために貼っているものだ。最高に間抜けで、恥ずかしくて、昨日の夜の熱を思い出して、俺は深く息を吐いた。
「直治、ゲームしない? 勝ったら相手に一つ、なんでも命令できるというのはどう?」
「・・・なんでも?」
「そう。なんでも」
「『来る日』がなんなのか、教えてくれるのか?」
都はにやりと笑った。
「いいよ。私が勝ったらフィストファックさせてね」
「う、わ、わかった・・・」
都は服を脱ぎ、ブラジャーも外す。白い肌に食い込む黒い下着とガーターベルトに身体が勝手に興奮してしまう。ベッドの上で向かい合って座るように促され、俺がその通りにすると、都は大きな乳房を両手で持って、寄せ合わせた。
「勃たせて。舐めちゃ駄目よ」
珍しい誘い方だ。俺は頷き、愛撫を始めた。
「ふ、うう」
「声を殺すな」
「んんっ、やなこった」
「強情なヤツめ」
愛撫を続け、都の乳首が完全に勃起したところで、俺は手を放した。
「フフッ、さてさて・・・」
「次は俺の番か・・・」
俺が都にしたのと同じように、愛撫される。俺は声をおさえられない。
「うッ、んんっ! ひッ、うう・・・!」
「辛抱強い性格なのに、快楽には弱いのね」
「みやこのっ、せいだろぉっ・・・!」
「さあ、直治。『綱引き』をしましょうね」
「つ、つなひき・・・?」
都は俺の乳首から手を放すと、チェーンの両端にニップルクランプが付いた物を取り出した。
「乳首からおもちゃが二つとも取れたら負けよ。ネジで締め付ける強さを調節できるから、負けたくないなら、わかるよね?」
「そ、そんな、俺が圧倒的に不利じゃねえかっ!」
「フフッ、自分で言っちゃうんだ。でもそうよね、だから、私が先にコレを付けるよ。どう?」
「・・・わ、わかったよ」
都は自分の乳首におもちゃを嵌めて、ギリギリとネジを締める。つらそうに片目と唇を歪めている。
「お、おい、痛いんだろ? 無茶するなよ?」
「男に二言はない」
「女だろうが・・・」
もう一つ、嵌める。乳首は痛々しく変形していて、都は少し息を荒げていた。チェーンはあまり長くないので、都が俺に身体を近付けて余裕を持たせる。俺はおもちゃを手に持つと、鼻から深く長く息を吐いたあと、おもちゃを嵌め、ネジを締めた。
「ひぎっ、いいぃいぃい・・・!」
「そんなにしたら血が出ちゃうよ?」
「うぅ、うるさっ、あああっ・・・」
一つ付けただけで、身体がガクガクと震える。絶対に負けない。負けるもんか。『来る日』がなんなのか聞き出してやる。
「おお、偉い偉い。二つとも自分で付けられたね」
「あっ・・・はぁあ・・・」
「直治、自分から引っ張らないと、加減ができなくてつらいよ?」
「わ、わかって、」
「わかってるならいいの。じゃあ、」
ぐぐぐっと都が身体を後ろに傾けた。大きな乳房が伸びる。
「ああぁああぁああああッ!!」
「ほ、ほら、直治! 仰け反ってないで引っ張りなさい!」
「あぐっ!! うぅう!! んんぅ!!」
俺はどうすることもできない。どこかを掴みそうになる手を空中で漂わせて、目がちかちかするのを必死に耐える。痛くて、気持ち良くて、この状況に興奮して、頭が、頭がおかしくなる。都が俺の腹を蹴るように足の裏で押して、どんどんお互いの身体を離そうとする。
「直治っ! 勝ちたくないのっ!?」
「まっ、まけないいぃいっ!!」
「あはっ! その調子その調子!」
じりじりと俺は身体を後退させる。ばちんっ、と音がして、都の乳首からおもちゃが一つ外れた。都が、まずい、という顔をした。俺が油断したのがいけなかった。ばちんっ、と再び音がして、俺の乳首からおもちゃが取れてしまった。
『あっ』
声が重なる。俺はそのまま後ろに倒れ込んだ。二人で荒い息をする。都が俺の顔を覗き込む。
「引き分け、かあ。フフッ、予想外だ」
「も、もう一回・・・」
「ええ? もう一回するの?」
「勝つまでやる・・・」
「・・・もう。仕方がないなあ。ちょっとだけ、教えてあげる」
都はどこか寂しそうに、少しだけ笑った。
「直治」
都の瞳が、七色に輝く。
「私が死んだら、悲しい?」
身体が、動かない。
「私は、直治が死んだら、悲しい」
都は優しい表情をする。
「淳蔵が、美代が、千代さんが、桜子さんが、なにをしてくれても、私は私じゃいられなくなる」
慈しむように、俺の頬を撫でる。
「大丈夫だよ」
灯りを落とした暗い部屋。都の瞳が眩しい程、発光し始める。
「誰も死なせない」
ぎらぎら、ぎらぎら。
「私は死なない」
都がゆっくりと瞬くと、瞳が、元に戻った。
「さて、」
ぐいっ、と都がチェーンを引っ張る。冗談や洒落ではなく、本当に乳首が千切れてしまう。
「いぃいいぃいッ!?」
「『勝つまでやる』なんて我儘言う子に付き合ってあげたんだから、直治も私の我儘を聞くべきじゃない?」
「うう、う・・・」
「濁った声で下品に喘ぐ姿が見たいな」
「わ、わかり、ました・・・」
翌日。朝食の時間。
「あら? 皆さん、どうされました?」
3Q太郎は都と俺を交互に見て、ガチガチに緊張し、顔を赤くすると少し身を屈めた。
「へぅ! へ、変な夢を見まして」
「あら、早速ですか? どのような夢でしたの?」
「と、とても怖い夢でした! 動画のネタバレになっちゃいますから、お話することはできないんですけど!」
「ウフフ、楽しみにしていますね」
「あは、ははは・・・」
傾国の美女と筋肉しか取り柄のないような男がいやらしいゲームを始めたと思ったら、ヒンヒン喘いでいるのは男の方で、張形をつけた女に尻の穴を穿り返されて、獣のように吠えながらも涎を垂らしてだらしなく笑っている姿を見たら、誰だって困惑するだろう。無理はない。
食事が終わり、事務室に戻る。暫くすると、3Q太郎が訪ねてきた。
「直治さん、おはようございます」
リーダーの幸太郎に続いて、啓太郎と竜太郎も挨拶をする。
「おはようございます。なにかご用で?」
「はい。取材を、と思いまして」
「どうぞ」
カメラが回る。
「Nさん、昨日は夢を見ましたか?」
名を伏せるために『Nさん』と呼ぶことにしたらしい。
「いいえ。昨夜は社長と『ゲーム』をして、夜遅くまで起きていたので」
「えっ!?」
全員、吃驚している。
「あの、どんなゲームを?」
「綱引きを」
「つ、綱引き・・・?」
インタビュアーの幸太郎が、初めて知った単語を繰り返して覚えるように言う。
「ああ見えて子供っぽいところがありましてね。この館に住み着いている『なにか』は、社長のそんなところを気に入っているのかもしれません」
「『なにか』とは、なんですか?」
「さあ? 俺は見たことがないんですけれど、お客様やメイド達から聞いた話では・・・」
全身真っ白の大きな『なにか』が館を徘徊している、という話を簡潔に伝えると、3Q太郎は喜んだ。俺はジャスミンの話をしているので、嘘は言っていない。3Q太郎は取材を終えると、丁寧に礼を言ってから、事務室を出ていった。
「ふん、馬鹿共め・・・」
ちく、と服の中で絆創膏が擦れた。腫れあがった乳首をおさえるために貼っているものだ。最高に間抜けで、恥ずかしくて、昨日の夜の熱を思い出して、俺は深く息を吐いた。