二百九十一話 生きているだけで

文字数 2,456文字

「ねえ、淳蔵。淳蔵って変態なの?」


都にだけは言われたくない、という台詞は言えなかった。口に銀色のガムテープを貼っているからだ。両手首もテープでガッチリと固めている。


「縛られただけでこんなになっちゃってさあ・・・」


ズボンの上から形をなぞるように撫でられる。


「それとも、酷いことをされているのに興奮してるのを責めた方が、いいのかな?」


都は、悪くない。だって俺からこうしてほしいと頼んだのだから。ガムテープ越しにキスをされただけで身体が跳ねて反応する。


「うーん、妬いちゃうくらい美人ねえ・・・」


頬を撫で、髪に指を絡められる。それだけで鼻息が荒くなって、顔が赤くなって、恥ずかしい。


「じゃ、お望み通り滅茶苦茶にしてあげようかな」


シャツのボタンを全て外してはだけさせ、乳首を抓られる。俺は美代と違って痛いのはあまり好きじゃないし、直治と違って乳首でそんなに感じないのに、金庫の鍵を無理やり開けようとするような乱暴さで捻じられた。


「つっ、うんんっ・・・!」


ズボンのベルトはボタンを外してそのまま、ズボンと下着は乱暴に脱がされて、中途半端に片足に引っ掛けられる。お互い同意の上、それどころか双方喜んでこの状況を作り出しているのに、これじゃあまるで襲われて無理やりされているみたいだ。でも、それが、凄くイイ。


「んんっ!? んっ・・・」


睾丸に吸い付かれ、舌で撫でられ、柔らかい唇で挟まれる。繊細な動きをする指で弄ばれて、文字通り手の平で転がされる。


「んーっ、んんっ、んんんっ」

「あはっ、触ってあげないよ」


男根は駄目らしい。


「淳蔵、じっとしてなさいね」


都は指にローションを絡めると、俺の尻の穴に挿入する。


「んっ! んっ、ふうっ」

「じっとしてろっつったろ」


低い声で命じられる。身悶えることすら許されない。

必要以上にじっくりと解される。

俺は『滅茶苦茶にしてほしい』とお願いしたのに。


「淳蔵、挿れるよ」


てっきりとんでもないモノを挿れられると思っていたので、拍子抜けした。なんなら少し小さいかもしれない。でも、長くて、いいところに当たっている。


「んんっ、んぅ、ふっ・・・」


身体を揺さぶられる。気持ち良い。


「んっ、んんっ、んん、ん・・・」


甘い声を出す自分が情けなくなると同時に、物凄く興奮する。


「ふぅっ、んっ、うっ、んんんっ・・・!」


イってしまいそう。


「気持ち良い?」

「んんっ!」

「そう。私も気持ち良いよ。最高の気分・・・」


処女のくせに、十五歳のガキのくせに、雄の顔をしている。


「ううっ、んっ! んんんっ! ふ、ううぅうううぅっ!」


俺は仰け反って、イってしまった。射精が終わったところで、都が口のガムテープを乱暴に剥がす。頬も唇も引っ張られて痛い。口で呼吸ができるようになると、俺はめいっぱい息を吸い込んだ


「はあっ・・・! はあっ・・・はあっ・・・。はーっ・・・」

「淳蔵、気持ち良かった?」

「め、めちゃくちゃにしてくれって、言ったのに・・・」

「してるんだけどな。やっぱり気付いてないか」

「な、なに・・・?」

「今、淳蔵のお腹の中に入ってるの、淳蔵のモノで型を取ったおもちゃだよ」

「は、なん・・・」


都はにっこり笑う。俺の肌にぞわぞわとなにかが走る。

昔、俺は、都とそんな『遊び』をした。

あの時、都はこう言った。

『望むなら自分に犯される感覚を教えてあげてもいい』と。


「あっ・・・あっ・・・」

「淳蔵になったみたいで、最高の気分だよ」


俺は都を舐めていた。本当に滅茶苦茶しやがる。


「ばッ、馬鹿ッ!!」

「気に入らなかった? じゃ、今夜はこれで終わり」

「ちが、ああっ!」


一気に引き抜かれる。屈辱だ。全然物足りない。都は手のテープを剥がし始める。


「や、やめないで・・・」

「んー?」

「やめないで、ください・・・」

「自分で乗っかって腰振ったら? 私は優しいから支えるくらいはしてあげるよ」


俺は何故泣いているのか。


「乗っかって、腰、振りますから、支えてください・・・」

「いいよ。シャツはそのままで」

「はい・・・」


手が解放された。俺はズボンと下着を足から抜き、仰向けになった都の上で、腰を落とす。


「うっ、はあ・・・」

「片手で抜きながらやってね」

「は、はい・・・」


卑猥な音が鳴り響く。感情がグチャグチャだ。なのに気持ち良い。


「上手に言葉でご奉仕できたら、機嫌が良くなってもう一度抱いてくれるかもね」


そう言われたら、やるしかない。


「き、きもちいいですっ! ながくて、あっ、い、いいところにあたって、すぐイきそう! ああっ、粘膜がこすれて、お腹がっ、抉れるぅ!」

「手が疎かになってるよ」

「ごっ、ごめんなさいっ! おっ、お願いです! 淳蔵のことっ、めちゃくちゃにしてくださいっ! な、なんでもしますからぁっ!」

「自分を安売りしちゃ駄目って教えたでしょ」

「あっあっ、み、都になら、本当になんでもっ、あっ!?」


都が上体を起こす。


「本当になんでも?」

「・・・はい」

「じゃあ、ずっと幸せでいてね」

「はっ・・・?」


都はにやりと笑う。


「なんでもするんでしょ?」

「な、なんだよ、それ・・・」


俺は咄嗟に、手の甲で口元を隠した。どうしてなのかは自分でもわからない。


「俺は、都が生きているだけで、幸せだよ・・・」


都は少しだけ悲しそうな顔をしたあと、嬉しそうに笑った。


「あとで髪の毛洗ってあげる」

「幸せ過ぎて死ぬ・・・」

「あはっ。ほら、突いてあげるから掴まって」

「はい・・・」


身長差があるので、俺は都の肩に手を置く。都は俺の背に手を回すと、強烈に抱きしめて、ゴツゴツと音が鳴りそうな程に突き上げ始めた。


「ああっ! んっ!」

「淳蔵、舐めていい?」

「だ、だめっていってもなめるくせにっ!」

「わかってるじゃないの」

「んひっ!? うぅうっ! き、きもちいいっ!」

「私も気持ち良い・・・身体が溶けそう・・・」

「あっあっ! イっ!? イくっ! うっ、あッ・・・!!」


快楽に震える喉から、意味のある言葉は出てこなかった。


「さあ、淳蔵。もっと遊ぼう」


都は幸せそうに笑っている。

都の瞳に映る俺も、幸せそうに笑っていた。
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