二百八十七話 クイズ
文字数 2,844文字
都に頼まれていた『おもちゃ』が出来た。
「あ・・・、あれ?」
「な、なにこれっ?」
椿と裕美子が目覚める。二人共オムツ以外は身に着けておらず、椿は椅子に座らせて手は後ろに、足首は椅子に固定して拘束し、裕美子は小さな台に覆い被せる形で拘束していた。二人は少し距離を開けて向かい合っている。
「ちょっ、なんで裸っ!? えっ!?」
「み、都様っ!! な、なにを・・・」
裕美子に問いかけられた都がにっこりと微笑む。
「クイズでーす。食べもので遊んではいけない。マルかバツか」
椿と裕美子はぽかんと呆けている。
ピピッ、ピピッ。
淳蔵がタイマーを止めた。
「はい、時間切れ」
身が竦むような風を切る音。
破裂音。
美代が鞭で椿の腹部を打った音だ。
「ひぎゃああぁああああぁああぁあああッ!?」
椿が絶叫する。
「クイズでーす。食べもので遊んではいけない。マルかバツか」
都が問う。
淳蔵がタイマーを止める。
美代が鞭で打つ。
椿が絶叫する。
裕美子は泣きながら震えている。
「クイズでーす。食べもので遊んではいけない。マルかバツか」
「バツ! バツです! もう叩かないであげて・・・!」
「正解。ご褒美に『スタンプ』をあげましょう」
俺は裕美子に『スタンプ』を見せた。『よくできました』の文字が描かれた小さな焼き鏝だ。
「へっ?」
肉の焼ける良いにおいがする。
「ああああああああああああああああああッ!!」
二人共、あっという間に漏らした。
「クイズでーす。おもちゃは遊ぶためにあるものである。マルかバツか」
時間切れになると椿が鞭で打たれる。しかし答えると『スタンプ』をされる。と、考えているのだろう。裕美子は口を開かない。
「おっ、お前ッ!! 答えろよォッ!! お前ェェェッ!!」
椿が目を血走らせて叫ぶ。淳蔵がタイマーを止める、美代が鞭で打つ。
「答えまずッ!! 答えまずがら私には『ズダンプ』じないでぐだざいッ!!」
「クイズでーす。おもちゃは遊ぶためにあるものである。マルかバツか」
「マルでず!! マルでずーッ!!」
「正解」
俺は裕美子に『スタンプ』を押し当てた。
「アアアアアアァアアアアアアアァァッ!?」
椿が歪に笑う。保身が成功して安堵したのだろう。
「クイズでーす。久遠寺椿は天使のように清らかで美しい存在である。マルかバツか」
「はっ、はあっ、バツです! バツです!」
「正解」
完全に折れている。裕美子の絶叫が心地良い。
「クイズでーす。宮川裕美子は天使のように清らかで美しい存在である。マルかバツか」
「バツです!」
「正解」
俺はショック死した裕美子の背中に焼き鏝を押し当てる。椿はそれを見て泣きながら笑っている。
「クイズでーす。水無瀬文香は天使のように清らかで美しい存在である。マルかバツか」
「う、あ、マルです! マルです!」
「不正解。『がんばりましょう』の『スタンプ』です」
椿が『ひいっ』と息を吸い込み、歯をガチガチと噛み合せる。俺が『がんばりましょう』のスタンプを裕美子に押すと、椿は小さく短い呼吸を繰り返した。
「クイズでーす。一条都は天使のように清らかで美しい存在である。マルかバツか」
「マ、マル! マルです!」
「不正解」
椿は、なにがなんだかわからない、という顔をしている。俺は焼き鏝を持ち替えて『よくできました』のスタンプを押した。都に少し睨まれたが、無視した。
「クイズでーす」
文芸部の担任をロッカーに閉じ込めて階段の上から蹴り落とすのは良いことかどうか。自分より成績の良い人間を虐めて良いかどうか。兄弟や姉妹、ペットを人質に取るのは良いことかどうか。私物を売らせたり盗みを働かせるのは良いことかどうか。『お友達料金』を支払わせることは良いことかどうか。『クイズ』の意味を理解したのか、椿は回答の合間に言い訳たっぷりの謝罪を始めた。そんなつもりじゃなかった。わざとじゃなかった。悪意は無かった。
「クイズでーす。そんなつもりじゃなかった、わざとじゃなかった、悪意は無かったと言えば、なにをしても許される。マルかバツか」
椿が大声を上げて泣く。淳蔵がタイマーを止める。美代が鞭で打つ。都が問う。
「許ざれまぜんッ!! バツでず!! バツでずぅ!!」
「正解」
椿が嘔吐する。美代は苛立ちをおさえきれなかったのか、椿の頬を鞭で叩いた。
「美代、顔は駄目って言ったでしょ」
「すみません」
都が美代に手を差し出す。美代が鞭を渡す。
「次、邪魔したら、遊びに入れてあげないからね」
都は美代の腹を、服の上からだが、思いっ切り打った。一気に美代の顔が赤くなる。純粋に痛みを堪えているのと、都に鞭で打たれた悦びでだらしない顔をしないため。呆れた男だ。都が美代に鞭を渡す。美代は呼吸を荒げながら受け取った。
「クイズでーす。久遠寺椿と宮川裕美子は、一条都の『食べもの』になる予定だった。マルかバツか」
「た、たべ、もの・・・?」
美代が自分の手の平を鞭で軽く叩いて、ぺちぺちと音を鳴らす。
「バ、バツ、ですよね?」
「不正解」
「は、はは、あは、は」
「クイズでーす。久遠寺椿と宮川裕美子は、一条都の怒りを買って『食べもの』から『おもちゃ』に格下げされてしまった。マルかバツか」
「・・・マル?」
「正解」
「た、たすけてくださいぃ・・・。だれにも、なにも、いいません・・・。けいさつにも、いきませんから・・・。おねがいします・・・ど、どうか・・・どうか・・・」
「クイズでーす。久遠寺椿と宮川裕美子は、運が悪かった。マルかバツか」
「おねがいじまずぅ!! ごごろをいれがえでいぎでいぎまずっ!! もうにどとわるいごどじまぜん!! なんでもじまず!! なんでもじまずがらごろざないでぐだざいぃ!!」
淳蔵がタイマーを止める。美代が鞭で打つ。椿は命乞いを続ける。都も問い続ける。淳蔵がタイマーを止める。美代が鞭で打つ。椿は命乞いを続ける。都も問い続ける。
「クイズでーす。久遠寺椿と宮川裕美子は、運が悪かった。マルかバツか」
「ああああああッ!! マル!! マルゥゥゥッ!!」
「正解。淳蔵、消臭剤かけて」
「はい」
淳蔵は新品の消臭剤を中身が無くなるまで椿に噴射した。
「クイズでーす。水無瀬文香は、運が良かった。マルかバツか」
「マル、でずぅ・・・」
「正解」
「どうして・・・わだじがこんなめに・・・」
「飽きた」
都の台詞。それは、椿への死刑宣告。
「クイズを頑張ったご褒美をあげなくちゃね。沢山頭を使って疲れたでしょう? 焼きたてのあまーいクッキーをあげるわ」
千代と桜子が裕美子の背中をザクザクと切り取り、『よくできました』と『がんばりましょう』にわけて洒落た皿に乗せ、メイプルシロップをかける。
「しっとりした口当たりのクッキーは好きかしら?」
焼けた皮膚の裏の肉は、瑞々しく血を滴らせている。
「あまじょっぱくて美味しいわよ?」
「た・・・たす・・・けて・・・」
「まだクイズで遊びたいのかしら? じゃあ、クイズでーす。久遠寺椿は生きてこの地下室から出られる。マルかバツか」
「・・・・・・・・・マル」
「不正解。さあ、クッキーをどうぞ」
「あ・・・、あれ?」
「な、なにこれっ?」
椿と裕美子が目覚める。二人共オムツ以外は身に着けておらず、椿は椅子に座らせて手は後ろに、足首は椅子に固定して拘束し、裕美子は小さな台に覆い被せる形で拘束していた。二人は少し距離を開けて向かい合っている。
「ちょっ、なんで裸っ!? えっ!?」
「み、都様っ!! な、なにを・・・」
裕美子に問いかけられた都がにっこりと微笑む。
「クイズでーす。食べもので遊んではいけない。マルかバツか」
椿と裕美子はぽかんと呆けている。
ピピッ、ピピッ。
淳蔵がタイマーを止めた。
「はい、時間切れ」
身が竦むような風を切る音。
破裂音。
美代が鞭で椿の腹部を打った音だ。
「ひぎゃああぁああああぁああぁあああッ!?」
椿が絶叫する。
「クイズでーす。食べもので遊んではいけない。マルかバツか」
都が問う。
淳蔵がタイマーを止める。
美代が鞭で打つ。
椿が絶叫する。
裕美子は泣きながら震えている。
「クイズでーす。食べもので遊んではいけない。マルかバツか」
「バツ! バツです! もう叩かないであげて・・・!」
「正解。ご褒美に『スタンプ』をあげましょう」
俺は裕美子に『スタンプ』を見せた。『よくできました』の文字が描かれた小さな焼き鏝だ。
「へっ?」
肉の焼ける良いにおいがする。
「ああああああああああああああああああッ!!」
二人共、あっという間に漏らした。
「クイズでーす。おもちゃは遊ぶためにあるものである。マルかバツか」
時間切れになると椿が鞭で打たれる。しかし答えると『スタンプ』をされる。と、考えているのだろう。裕美子は口を開かない。
「おっ、お前ッ!! 答えろよォッ!! お前ェェェッ!!」
椿が目を血走らせて叫ぶ。淳蔵がタイマーを止める、美代が鞭で打つ。
「答えまずッ!! 答えまずがら私には『ズダンプ』じないでぐだざいッ!!」
「クイズでーす。おもちゃは遊ぶためにあるものである。マルかバツか」
「マルでず!! マルでずーッ!!」
「正解」
俺は裕美子に『スタンプ』を押し当てた。
「アアアアアアァアアアアアアアァァッ!?」
椿が歪に笑う。保身が成功して安堵したのだろう。
「クイズでーす。久遠寺椿は天使のように清らかで美しい存在である。マルかバツか」
「はっ、はあっ、バツです! バツです!」
「正解」
完全に折れている。裕美子の絶叫が心地良い。
「クイズでーす。宮川裕美子は天使のように清らかで美しい存在である。マルかバツか」
「バツです!」
「正解」
俺はショック死した裕美子の背中に焼き鏝を押し当てる。椿はそれを見て泣きながら笑っている。
「クイズでーす。水無瀬文香は天使のように清らかで美しい存在である。マルかバツか」
「う、あ、マルです! マルです!」
「不正解。『がんばりましょう』の『スタンプ』です」
椿が『ひいっ』と息を吸い込み、歯をガチガチと噛み合せる。俺が『がんばりましょう』のスタンプを裕美子に押すと、椿は小さく短い呼吸を繰り返した。
「クイズでーす。一条都は天使のように清らかで美しい存在である。マルかバツか」
「マ、マル! マルです!」
「不正解」
椿は、なにがなんだかわからない、という顔をしている。俺は焼き鏝を持ち替えて『よくできました』のスタンプを押した。都に少し睨まれたが、無視した。
「クイズでーす」
文芸部の担任をロッカーに閉じ込めて階段の上から蹴り落とすのは良いことかどうか。自分より成績の良い人間を虐めて良いかどうか。兄弟や姉妹、ペットを人質に取るのは良いことかどうか。私物を売らせたり盗みを働かせるのは良いことかどうか。『お友達料金』を支払わせることは良いことかどうか。『クイズ』の意味を理解したのか、椿は回答の合間に言い訳たっぷりの謝罪を始めた。そんなつもりじゃなかった。わざとじゃなかった。悪意は無かった。
「クイズでーす。そんなつもりじゃなかった、わざとじゃなかった、悪意は無かったと言えば、なにをしても許される。マルかバツか」
椿が大声を上げて泣く。淳蔵がタイマーを止める。美代が鞭で打つ。都が問う。
「許ざれまぜんッ!! バツでず!! バツでずぅ!!」
「正解」
椿が嘔吐する。美代は苛立ちをおさえきれなかったのか、椿の頬を鞭で叩いた。
「美代、顔は駄目って言ったでしょ」
「すみません」
都が美代に手を差し出す。美代が鞭を渡す。
「次、邪魔したら、遊びに入れてあげないからね」
都は美代の腹を、服の上からだが、思いっ切り打った。一気に美代の顔が赤くなる。純粋に痛みを堪えているのと、都に鞭で打たれた悦びでだらしない顔をしないため。呆れた男だ。都が美代に鞭を渡す。美代は呼吸を荒げながら受け取った。
「クイズでーす。久遠寺椿と宮川裕美子は、一条都の『食べもの』になる予定だった。マルかバツか」
「た、たべ、もの・・・?」
美代が自分の手の平を鞭で軽く叩いて、ぺちぺちと音を鳴らす。
「バ、バツ、ですよね?」
「不正解」
「は、はは、あは、は」
「クイズでーす。久遠寺椿と宮川裕美子は、一条都の怒りを買って『食べもの』から『おもちゃ』に格下げされてしまった。マルかバツか」
「・・・マル?」
「正解」
「た、たすけてくださいぃ・・・。だれにも、なにも、いいません・・・。けいさつにも、いきませんから・・・。おねがいします・・・ど、どうか・・・どうか・・・」
「クイズでーす。久遠寺椿と宮川裕美子は、運が悪かった。マルかバツか」
「おねがいじまずぅ!! ごごろをいれがえでいぎでいぎまずっ!! もうにどとわるいごどじまぜん!! なんでもじまず!! なんでもじまずがらごろざないでぐだざいぃ!!」
淳蔵がタイマーを止める。美代が鞭で打つ。椿は命乞いを続ける。都も問い続ける。淳蔵がタイマーを止める。美代が鞭で打つ。椿は命乞いを続ける。都も問い続ける。
「クイズでーす。久遠寺椿と宮川裕美子は、運が悪かった。マルかバツか」
「ああああああッ!! マル!! マルゥゥゥッ!!」
「正解。淳蔵、消臭剤かけて」
「はい」
淳蔵は新品の消臭剤を中身が無くなるまで椿に噴射した。
「クイズでーす。水無瀬文香は、運が良かった。マルかバツか」
「マル、でずぅ・・・」
「正解」
「どうして・・・わだじがこんなめに・・・」
「飽きた」
都の台詞。それは、椿への死刑宣告。
「クイズを頑張ったご褒美をあげなくちゃね。沢山頭を使って疲れたでしょう? 焼きたてのあまーいクッキーをあげるわ」
千代と桜子が裕美子の背中をザクザクと切り取り、『よくできました』と『がんばりましょう』にわけて洒落た皿に乗せ、メイプルシロップをかける。
「しっとりした口当たりのクッキーは好きかしら?」
焼けた皮膚の裏の肉は、瑞々しく血を滴らせている。
「あまじょっぱくて美味しいわよ?」
「た・・・たす・・・けて・・・」
「まだクイズで遊びたいのかしら? じゃあ、クイズでーす。久遠寺椿は生きてこの地下室から出られる。マルかバツか」
「・・・・・・・・・マル」
「不正解。さあ、クッキーをどうぞ」