十八話 女子〇生

文字数 2,123文字

こんこん。ノックは快楽の音。本当に?


『どうぞ』


俺はドアを開けた。


「みーやこ! お呼びでしょうかぁ?」


部屋の中央に女学生の制服が飾られている。


「お、今回は制服かい?」

「話が早ぁい!」

「これどこの?」

「オーダーメイド」

「・・・まあ、趣味に金をかけるなとは言えないしな」


ちょっとどうかと思ったが、都の生き甲斐なのだから仕方がない。俺は制服に着替える。採寸ぴったり。オーダーメイドなんだから当たり前か。


「化粧もする?」

「よろしくぅ」


都の鏡台を借りて化粧もする。三十歳のおっさんがこんなことしてるのかと思うと、呆れと同時に興奮が身体の中に充満した。


「できたよ、せんせい」

「せっ、先生!」


あまりなりきりすぎず、雰囲気を楽しむのが都の好みだ。そして俺の好みでもある。


「写真撮るんでしょ?」

「はい!」

「可愛く撮ってね」

「はい!」


都はカメラで俺を撮る。この瞬間が、この非日常が、俺を俺でいさせてくれる。


「美代」

「なに?」

「世界一可愛い」

「ありがと・・・」


俺は袖で口元を隠した。


「仕事の話なんだけど、いい?」

「いいよー」

「もう少し人を雇って、直治に前に出てもらって、美代には大学に、」

「またその話? あんまり人を雇い入れるのは・・・」

「私と貴方だけの問題じゃないから。もう決まったことなの」

「そんな・・・」


俺は素直に喜べなかった。都がカメラを置き、俺を抱きしめる。


「なんだかんだ言って、『外』が怖いとか?」

「・・・怖いさ。今の生活が、都の居る生活が壊れることを恐れてる」

「高校の時はそんなこと言わなかったのに。大人になったね」

「もうおじさんだよ」

「可愛いおじさんですこと」


都はそっと俺に口付けた。


「『外』の世界は、やっぱり怖いよ。でも、もう決まったことなのなら・・・」


俺は都を抱きしめ返す。


「都をより良き幸せに導くためなら」


なんだろう。その言葉に、私は深い意味を感じた。


「じゃあ、決まりね。直治には朝食の時に伝えましょう。メイドの採用と教育は任せっぱなしの方がいいのよね?」

「うん。俺の定めた基準に達するメイドを育てて、安心して『外』に行くことにするよ」

「やっと承諾してくれたね」

「・・・俺は愛玩動物なんだから、『行け!』の一言で良かったんじゃない?」

「私が愛玩動物を扱っているように見える?」


俺は嬉しくなって、都の頬に何度も自分の頬を擦り寄せた。


「俺を馬鹿にしてた連中を、見返したいだけなんだ」


都の細い腕が、俺の背中を包む。


「自信を取り戻したら、またここに戻ってくるよ」

「待ってるね」

「『男』としての自信を持てるようにさ、ご奉仕してほしいな・・・」

「わかりました」


俺は服を脱ぐ。都も服を脱いだ。都は跪いて、俺を見上げる。


「美代様」

「う・・・」


俺は興奮の濁流の中に居た。初めてだ、こんなのは。


「ど、どうすればいい?」

「手、握ろうか」


俺と都は両手を握る。


「顔に擦りつけてごらん」

「マジかよ・・・」


恐る恐る、擦りつけてみる。とてつもない支配欲、快感。美しい都の顔が弛緩して、いやらしく俺の男根を見つめている。握り合った両手から行き交うお互いの体温、汗。俺はカクカクと腰を振った。


「んっ、んんっ、都、肌、綺麗・・・」

「イラマチオしてみる?」

「えっ!? あっ、まさか、淳蔵と直治は、」

「したことあるよ」

「ブッ殺すぞあいつら・・・!」


俺の都になんてことを。


「するの? しないの?」

「でも、都が苦しいだろ・・・?」

「まあ、おえっとなっちゃうから胃液が出てきちゃうけど、胃液でべたべたになるの気持ち良いよ?」

「でも、でも・・・」

「私の耳の後ろ掴んでさ、猿みたいに腰振って、こいつは雌なんだ、俺は雄なんだって本能的に感じるの、美代も好きな感覚だと思うなぁ」

「そんなこと言われたら・・・」


都が握っていた手を離し、俺の男根を咥えて、俺の太腿に手を添える。それだけでイキそうなのに、これから都に酷いことするなんて。そう思いながらも、俺は都の耳の後ろを掴んで、腰をゆっくりと動かしていた。喉の奥に先端があたる。膣への挿入が許されない俺達にとって、それは疑似的に都の膣に挿入しているような感覚で、俺は堪らなくなって、都の苦しさなんて忘れて、都の喉を突いた。ごぶっ、ごぶっ、と都が苦しそうに息をする。それでも男根に吸い付いてきて、俺は犯しているのに犯されている気分だった。


「うううっ! これ、すごい良いっ!」


都の言っていた通り、唾液とは違うネバネバが俺の男根に纏わりつく。


「都っ! 苦しいのっ? ごめんっ、俺、止まらないっ!」


俺の都。格好良くて、お茶目で、賢くて、美しくて。


「だ、出していいの!? 中にっ、ううっ、出してもいいの!?」


吸い付きが一層強くなった。本当にどっちが犯しているのかわからない。腰に広がる射精前の感覚。俺は、

私は、


「あっ!?」


目が覚めてしまった。


「畜生ッ!!」


私は寝たまま布団を拳で叩く。最近、イく寸前に目が覚めることが多い。


「羨ましい・・・」


都様を一番愛しているのは私だ。時間より、密度だ。そう自信を持って言えないことが悔しくて悔しくて堪らなかった。


「妬ましい・・・」


愛しているの、都様。なのに、どうしてこんな意地悪な夢を見せるの?


「都様・・・」


私は、泣きながら眠った。
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