三百二十一話 雌

文字数 2,081文字

しゃぶっていたら、左の髪が顔に垂れてきた。人差し指で掬い上げ、耳にかけ、そのまま手でおさえる。都はこの仕草が堪らなく好きらしい。唇を歪ませながら吊り上げている。


「ん、はあっ、おじさん、バキバキじゃん・・・」

「淳蔵ちゃん、美人だし、上手だからさあ」

「嬉しいよ・・・咥えてるだけでイきそう・・・」


俺は指輪の『スイッチ』を入れた。腰まで届く長い髪の、隅々まで神経が行き渡る。


「おじさん、淳蔵ちゃんの髪、触って?」


左手を放すと、さらり、と髪が垂れる。都はそれを手の平で掬い上げた。


「あっ・・・!」


親指の腹で擦られて、俺は身体をビクビク震わせて反応する。


「はっ、ううっ!」

「咥えて」

「ああっ、は、はい・・・」


今、俺の口の中にあるものが、このあと俺の身体を蹂躙するのだと考えると、どうしても興奮してしまう。都の指が俺の髪を弄ぶたびに、チリチリと焼かれるような、痛い程の快楽を感じて、息が苦しい。必死に舌を絡ませて、必死に唇を窄めて、必死に頭を動かす。


「うぶっ、うっ、んんっ、ぐっ・・・」


や、やばい。

髪で、

髪でイっちまう。


「ふぶっ、うっ、うぶっ!!」


イってしまった。


「はあっ・・・、ケホッケホッ、はあっ、はあっ・・・」

「淳蔵、立ちバックしようか」

「か、壁は・・・」

「いいよ」

「ありがとうございます・・・」


身長差がかなりあるので、俺は中腰になるしかない。そうすると腰から下が、特に膝がつらい。身体を揺さぶられるので余計に。壁を支えにするのは『お仕置き』に近いのだ。

都が指をぱちんと鳴らすと、窓際の飾り棚に置かれていた物が移動した。棚に手をつくと、都が俺の腰を片手で掴む。足を大きく開いて腰を落とすと、尻の穴にペニスバンドの先端をあてがわれた。


「あ、あう・・・」


苦しいのに気持ち良い。

苦しいのが気持ち良い。


「いくよ」

「はいっ・・・」


ゆっくり、ゆっくり。そして、次第に激しく。


「絶景だね」


気持ち良い、苦しい、つらい、凄くイイ。早く、早くイかないと膝が、膝がガクガク揺れてる。倒れそう。棚もガタガタ揺れてる。早くイかないと壊れる。いやらしいことを、いやらしいことを考えるんだ。俺、男なのに犯されてる。男なのに女に犯されてる。自分より小さな女に犯されてる。尻の穴を犯されて、ズボズボされて、情けない声を上げてる。ぶぽぶぽと汚い水音が鳴っている。犯されてる。犯されてる。イきそう、イき、イきそうっ。


「がっ・・・はあっ・・・」


ペニスバンドを抜かれると、身体からも力が抜けて、俺は膝から崩れ落ちた。棚に精液が飛び散っているのを、荒い息をしながらぼんやりと見つめた。


「淳蔵、試したいことがあるんだけど、いい?」

「はぇ・・・?」

「よいしょっと」


都は俺を軽々と持ち上げてベッドに運び、仰向けに寝転ばせた。そして、俺に見えるように握り拳を作った。


「とんとんとん」

「あっ!?」


臍を、とんとんとん、と軽く叩かれる。それだけなのに、身体の内側から快楽が広がっていく。


「おひっ!? おっ、な、なにごれぇ?」

「おっ、気持ち良いか?」

「きも、ちっ、いいっ!」


腹が勝手に痙攣して、息が上手くできない。


「淳蔵、ノックでイっちゃうの?」

「いっ、いぐっ、おぐでいぐっ、おぐでいぐうっ!!」


都が笑う。


「雌になっちゃったねえ」

「ひぎっ・・・ううぅ・・・」


幼子がしゃくりあげるように、空気を吸う。


「外側から内臓を弄られてメスイキ決めるって、どんな気分?」

「・・・俺、が、」

「うん?」

「俺が、変態なんじゃない・・・。都が変態なんだよっ・・・。この、クソド変態っ・・・!」


そう言って、足を開く。腹も膝もまだガクガクと震えている。間抜けな姿だろう。


「おじさんを怒らせたら、お小遣いあげないよ?」

「いいの? 淳蔵ちゃんが居なかったら、相手してくれるオンナノコ居ないくせに」

「あらら、ごめんなさい」


ゆっくりと挿入され、釘を打つように打ちつけられる。上等なベッドのスプリングがギシギシと音を立てて軋む程に。


「すごいぃっ! あっ! なかが、えぐれるぅ!」

「ここ?」

「ぞごっ、おおおっ!! いっ、いぐっ・・・!!」


もう、『どっち』でイってるんだか、なにが出てるんだかわからない。どれ程時間が経ったのかも。俺も都も疲れ果てて、汗だくになっていた。


「ふぅー・・・」


都が充実感のある息を吐く。


「シャワー浴びてくるね」


そう言って、浴室に行ってしまった。横向きになっていた俺は上体を起こしてベッドを見る。ぐちゃぐちゃだ。主に俺の精液で。これが、俺がシャワーを浴びている間に綺麗になるんだから、都の力にはまだまだ謎が多い。


「ただいま。淳蔵も浴びておいでよ」

「あ、はい・・・」


今日はいつもより足に力が入らない。ヨタヨタとした足取りで浴室へ向かい、ドアを開けた。洗面台に映った自分の横顔を見て、吃驚して、振り返る。蕩け切った、雌の顔をしていた。悔しい。恥ずかしい。俺ってこんな顔もできるんだ。都にずっとこんな顔を見せていたのか。感情がグチャグチャになる。羞恥すら快楽となって余韻と共に身体を襲う。俺は慌てて風呂場に入り、湯の温度を高めて熱いシャワーを浴びた。
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