第164話 安楽椅子

文字数 580文字

 今ぼくが勤めているような大企業は、確固たるタテ社会である。
 下の者の言い分が上に通るまで、1つ1つの段階を経て経て、やっと上にたどき着き、おぅ、分かったぞ、と声が返ってくるまで、タテ社会ではそれなりの時間を要する。
 以前勤めていた小さな鉄工所では、すぐ近くに社長がいたし、すぐに声が通った。

 大きな企業では、なかなか無責任になることができる。
 従業員数が多いから、ヨコ社会では収集がつかなくなる以上、タテ社会になるのは必然である。
 面倒くさいことを、基本的にヒトは嫌う。「上の言うことを聞いていればいい」という場所に落ち着く。

 そして自己正当化の落とし穴へ気持ちよさそうに入り込む。
 お前も期間従業員なんかじゃなくて正社員にならないか。
 声をかけられた人が断る。声をかけた人は、あ、そう、というふうに応じる。まるでこの会社の正社員になることが社会の正しさであるかのように。

 給料が良くたって、幸せは買えないよ。「これがいいのだ」なんて決められた尺度なんてナイんだよ。
 小さな企業でしっかり自分を生きている人が、どれだけいることか。
 ありきたりの企業に何の魅力も感じず、自分探しの旅人がどれだけいることか。
 パラダイスは、おのれが決めます。(誰に言ってるのかね)
 つくられた居心地のよさそうな椅子には、座れません。座れたら、気持ちいいんだろうね(いいのかな)。
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