第537話 わたしを見るわたしは

文字数 303文字

 いつも横にいる。たまに遠ざかり、急に接近してくる。
 わたしのわたしは、縦・横・斜めに駆け抜ける。そこに意志はない。
 わたしのわたしは、何も知らない。無知にさえ、足りない。

 フッと、フレームを取り出す。どこから持ってきたのか、四角いカメラ。被写体は自己。
〈 ここに、おまえは、こう、おさまれよ 〉 そいつは言う。
 わたしは首を振る。わたしは、こんなところにおさまりたくない。わたしのいる場所は、ここじゃないんだ。

 逃げ続けた。すると、行った。
 行った先から、また逃げた。

 わたしのいる場所。どこだ、わたしが、わたしを許せる場所。
 そう、この『くりかえすということ自体が』、わたしの場所であったということだ。
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