第277話 不思議なフク

文字数 788文字

 フクは淋しがり屋である。単純に、ひとりでいるのが嫌いなのだ。
 といって、あまりそばに近づくと、イヤそうな目付きでこっちを見て、フンッ!って感じで後ろを向かれるか、違う場所へ移動する。しかしひとりでいるのは嫌いなのだ。

 うちにはキャット・タワーというものがあって(猫のジャングルジム?みたいなものです)、地上から150センチくらい上にあるキャンパスの上にフクはよく寝ている。外枠は平板、内側は布でできているそのキャンパスから、フクはよくハミ出して寝ている。
 下から見ると、丸まった背中が大福餅みたいにキャンパスからハミ出していて、美味しそうに見える。足や手も、たまにビューンと伸ばして、ハミ出しながら寝ている。長い尻尾がダラ~ンと真っ直ぐ垂れている。
 矢沢永吉が、「ロックンロールは、ハミ出さなきゃダメよ。」と言っていたのを思い出す。

 そんな時、「フク」と呼びかけると、尻尾がプラプラ動く。(返事してるんだろうナ、きっと)
 フクは、一定の距離を保って、ぼくとつきあっている。べったりは嫌いだし、といって、ずっと無視されるも、好きではない。だが、一緒にいてほしい。

 とにかくフクは、ぼくが外出するのを嫌う。
 寝ててもいいから、パソコンやっててもいいから、遊んでくれなくてもいいから、外出されるより、家にいてくれることを欲している。

 ま、ぼくもフクと一緒にいたいから、そういう目でフクの気持ちを察しているのだろうが、1日ぼくが家にいると、フクも非常に満足している様子なのだ。「満たされた顔」をしている。
 何分間かマタタビのおもちゃで一緒に遊んだだけで、ほかに何をしたわけでもないのだが。

 猫って、もっと孤独を好むのかと思っていた。これじゃ、まるで犬じゃないか…と思ったが、チャンと「一定の距離」を置いているところが、繊細で面白い。
 でも、フク君。ほんとに、きみと会えてよかったよ。
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