第445話 文章の不思議

文字数 383文字

「私」と「あなた」がいる。
「私」は「あなた」に語る。
「あなた」は「私」に語る。
その語り合いを、ぼくは文章にしてみよう。

 すると、摩訶不思議、「私」は「私」という一人称であることには変わらないが、二人称であるはずの「あなた」は、「彼」あるいは「彼女」の三人称となって表現されるのだ。
 この時、「ぼく」はどこにいるのかは、置いておく。こいつがいちばん気になるが。

 つまり、文章というものそのものが、客体化されざるをえないものを、既に内包しているということだ。いや、内包どころか、そのものなのだ。
 文を書くという行為は、客体化されざるをえないものに向かって、いや、客体そのものに向かって、するものなのだということ。

 ということを教えてくれた、池田晶子さん。あなたの書いたもの、頭の中の形のないものを、言葉という形でこの世に表現せしめた、あなたの本。善かったです。善いです。
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