第235話 ラブホテル

文字数 606文字

アジサイの季節が近い。
アジサイは「紫陽花」と書く。
ラブホテルの名前に、「紫陽花」と書いて「しようか」と読ませるラブホテルもあるそうである。なかなかのネーミングである。

ぼくがあのラブホテルに行ったのは、19のときだった。
相手のかたは、ぼくより15年上のかたで、ぼくたちはしっかりつきあっていた。
ぼくが、いわゆるセックスをした初めてのかたであった。
「よろしくお願いします。」
ふたりで正座して、お辞儀をし合ってから、いとなみに及んだものだった。

彼女とは自然に、ほんとうに自然に別れてしまった。
以来、しばらくラブホテルとは無縁の生活を送り、ぼくは結婚し、離婚すると、それまで友達だった女の子と急に親しくなった。
わざわざ東京から豊橋まで来てくれて、ラブホテルまで一緒に歩いたものだった。

どういうわけか、離婚してから、それまでそんな関係でなかった女の子と奇妙に親しくなる機会が、嵐のように何回かあった。スコールを降らす雲が、3つくらい、ぼくの行くところ行くところ、わざとのように頭上に待ち構えているみたいだった。

あれは何だったのだろう。6月の、アジサイの季節だった。

恋は素敵なものだけど、べつにエッチなんかしなくても…なんて思うのは、ぼくが年を取ったせいなのだろう。

(ラブホテルの存在について書こうと思い、あれこれ思考を巡らしたのだけど、ムリでした。そもそも、何も考えず行くような場所なのでしょうネ。good grief!)
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