第628話 おしゃべりな猫

文字数 713文字

 猫が、こんなにおしゃべりだとは、知らなかった。
 うちの福(3歳、オス)だけだろうか。

 ぼくが居間にいると、パソコンのあるキッチンの方から「ニャアニャア」と声がする。何を呼んでいるのかと行ってみる。でも福は、ただパソコンの椅子の上に座り、悠然と丸くなろうとしているだけなのだ。人間のことなど、全く意にも介していない、という具合に。
 では、なぜニャアニャア言ったのか?

 福は、ご飯を食べた後も、必ず何か言う。このときは、「ニャア」ではなく、「ミャワワワン」「ワワォン」「ワワ~ン」という感じで、不思議な語感がある。
 人間に向かって何か言っている、というニュアンスは無く、ほとんど独り言に近い。

 ご飯が欲しい時は、いつになく真っ直ぐな目線で、お座りをしてジ──ッとこっちを見ている。「ご飯?」と訊くと、「ニャア」と小さく甘えた声を出す。舌なめずりも、したりする。

 トイレの後は、ハッキリと「ニャア!ニャア!」である。これは、「早く片付けて(綺麗にしろよ)」という訴えであることは、想像に難くない。人間に顔を向けて言ってくるので、ほぼ間違いないだろう。

 困るのは、朝4時くらいに、大きな声でニャアニャア言いながら、寝ているぼくと家人を起こそうとすることである。せめて、あと2時間後に起こしてほしい。

 おしゃべりのお返しに、「なぁ福、お前はお利口で、いつも元気で、ありがたいんだけど、もう少し小さな声でしゃべってくれたら、いいんだけどなぁ」などと、福に言う。
 福は、話しかけられると、必ず目をパチクリさせる。ふだんはしない「まばたき」を何回もする。

 謎の多い猫に思える。でも福にしてみたら、人間のほうが、よっぽど謎だらけなんだろうナ。
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