第414話 フクのお出迎え

文字数 706文字

 帰宅すると、ダンボールの爪とぎをバリバリやる音が聞こえる。玄関のドアの鍵を閉め、灯りをつけると、「ニャッ」と言いながらフクが来る。そしてドアのノブのあたりを見つめている。「外へ行きたい」と目で訴えている。
 たまに、深夜にマンションの廊下をひとりで散歩させている。ほんとうに臆病な猫なので、階段のところでいつも止まって、下へ降りていこうとしない。尻尾を動かしながら、お座りして階下をただ見つめている。この時フクは、いろんなことを考えているのだと思う。

「今日は、おんも、ナイナイよ。」ぼくはフクにそう言いながら背中を撫でる。フクは、「ブーブー」と喉を鳴らす。不満げな目線。
 だがぼくがパソコンのスイッチを入れ、手を洗っていると、フクはテーブルの上に乗っている。フクの目的はただひとつ、「ご飯」だ。もう、「コイツはゼッタイご飯をくれる、ここに乗っていれば。」と、フクの顔に書いてある。
「ご飯?」と訊くと、「あったりまえでしょ」と言わんばかりのフテブテしい目でこっちを見てる。

 ぼくはキャットフードをフクのお皿に注ぐ。減量どころではなく、「天高くフク肥ゆる秋」になるそうな気配。すごい食欲なのだ。
 そしてトイレに行って、いつもの「うんご~、うんご~」と唸りながらうんちをする。
 それからフローリングの床に寝そべってくつろぐ。その数分後、また残ったご飯を食べるのだ。お皿がカラになって、しばらくフクはまたくつろいだ後、お腹がすく。またテーブルに乗っておすわりして、舌なめずりして「ニャア」と言う。ぼくをまっすぐに見つめながら。
 で、またぼくはお皿にキャットフードをザラザラと注ぐ…。
 未来永劫、繰り返していくのだろうか。
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