第502話 夢
文字数 328文字
ぼくの少量の小学校生活の中で、「将来なりたい職業(夢)は?」といった課題が出され、原稿用紙に書くような場面があった。
将来の職業、なりたい職業、夢。
夢。
「用務員のおじさん」とぼくは書いた。
ぼくがあまり通わなかった小学校に、いつも温和な、やさしい顔立ちをした用務員がいたのだ。用務員という職業が、具体的にどういう仕事をする種なのか、ぼくにはわからなかった。今もわからない。ただ、その用務員のおじさんはいつもやさしそうで、柔和な表情と雰囲気を常時保ち、掃除道具などを持ちながら歩いていたのだ。今でも、顔をはっきり覚えている。
ぼくは、用務員になりたかったのではない。あの、いつもやさしい表情をたたえた、温厚な、あの用務員の『おじさん』になりたかったのだ。
将来の職業、なりたい職業、夢。
夢。
「用務員のおじさん」とぼくは書いた。
ぼくがあまり通わなかった小学校に、いつも温和な、やさしい顔立ちをした用務員がいたのだ。用務員という職業が、具体的にどういう仕事をする種なのか、ぼくにはわからなかった。今もわからない。ただ、その用務員のおじさんはいつもやさしそうで、柔和な表情と雰囲気を常時保ち、掃除道具などを持ちながら歩いていたのだ。今でも、顔をはっきり覚えている。
ぼくは、用務員になりたかったのではない。あの、いつもやさしい表情をたたえた、温厚な、あの用務員の『おじさん』になりたかったのだ。