第267話 24番があること

文字数 448文字

モーツァルト、ピアノ協奏曲24番。
27番まであるピアノ協奏曲の中で、短調は20番と24番だけである。

20番は、まだ春の新芽が芽吹く前の息吹が聞こえる。第2楽章のやさしさよ。
無心に新しい生命がその形へ現実になる前の蠢動。リクツじゃないんだけどサ。

24番の、この絶望さは何だ。

これでもか、これでもか、と繰り返されるデスペレート。
でもぼくは、この暗さの中に、希望を見る。
絶望の中に、希望があることを知らされる。

この24番に打ち込める力が、ぼくにないこと。
堂々巡りの始点は、知っていた。
ただぼくは、それを持続する力がない。
誘惑の魅力にばかり、取り付かれている。
終点までに、ぼくは息を抜いてしまう。

徹頭徹尾、悲しい、悲しい荒涼の茫漠。
24番を聴く。
ぼくの希望はこれを最後までひっきりなく、ずっと受け止めながら聴くということ。

今の悲しさは、これをひっきりなく受け止め続けることができないこと。
それで、希望じみたものを感じてしまう自分がいるということ。

絶望、希望、悲しさ、喜び、苦痛、歓喜。
紙一重の、あやうさ。
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