第271話 深夜のウルトラマン

文字数 1,775文字

 またしても見てしまったのである。土曜の深夜3時あたりから放映している「ウルトラマン」。
 これは初代ウルトラマンで、出だしは「ウルトラQ」と画面に出るのだけど、そのあと「ウルトラマン」その文字の下に「空想特撮シリーズ」という文字がある。
 そして、れいの「ズンズンチャッチャ、ズンズンチャッチャ、胸~に、光~る(だっけ?)マ~クは流れる☆~」みたいな歌が始まる。

 今回は「空からの贈り物」という回で、「スカイドン」という怪獣が登場した。
 空からは、いろいろなものが降ってくる、と真面目なナレーションが読み上げられ、要するにスカイドンという怪獣が日本に降ってきたのである。

 スカイドンは、そうとう重い怪獣であった。
 科学特捜隊が「怪獣を宇宙へ戻そう」と、ビーグル号からワイヤーみたいなのをスカイドンに引っ掛けて宇宙へ持って行こうとしたり、スカイドンの尻尾あたりにミサイルを撃ち込んで、そのミサイルの力によって宇宙へ飛ばそうとしたり。
 だがいずれの作戦も失敗に終わる。

 そしてウルトラマンの登場である。
 だが、スカイドンの重さにてこずっている間に、3分が経ってしまう。
 ピコーンピコーン。カラータイマー。
 ふつうならここでスペシウム光線なはずだ。
 だが、ここからぼくは信じられない光景を目にした。
 ウルトラマンは、怪獣をそのまま日本に残して、「ジュワッチ!」とひとりで飛んで空へ帰っていってしまったのだ。

 で、科学特捜隊の隊長の案により、「怪獣風船化作戦」が開始された。
 なにやらミサイル銃をアラシ隊員がスカイドンに向けている。
 横にいた隊長が、「よし、スカイドンのお尻の穴をねらえ。」(←真面目に言ってるんだよ)
「はい!」とアラシ隊員(毒蝮三太夫)。
「撃て!」「はいっ!」

 麻酔で寝ているスカイドンのお尻の穴に、ひゅるひゅるとミサイルらしきものが入った。命中である。
 そのミサイルにはホースみたいなものがくっついていて、「水素ガス」と書かれたタンクの積まれたトラックから、スカイドンの体内へ水素を注入させて風船みたいにふくらませ、宇宙へ浮かびながら飛んでいってもらおう、という作戦だった。

 これは成功したかに見えた。スカイドンはふわふわ空へ浮かんでいったからだ。
 だが、スカイドンをこうやって浮かばせたことは、航空自衛隊に伝わっていなかった。
 演習中の航空自衛隊が、「怪獣だ!」ということで、スカイドンに攻撃してしまったのだ。
 風船に穴が開いて落ちていくように、スカイドンもまた日本に落下していく。
(一体、この物語はいつ終わるんだろう)と思いながら見ていると、そこで再びウルトラマンの登場である。
 地上から空に向かうウルトラマン。
 空から地上に落ちてくるスカイドン。
 その空中でふたりが交わった瞬間、爆発した。
 何が起こったのか分からない。とにかくスカイドンはいなくなった。

 で、また真面目なナレーションが入る。
 場面は急に桜の花散る公園で、フジ隊員が着物を着て、お茶を煎じている。
 隊長と他の隊員たちも、あらたまった格好で正座している。
「春である。みんな、何だか幸せである。だって、春なんだから。」
 そんなふうなことをナレーションが言って、何かシュールな、こじつけのような終わり方をした。

 しかし、昭和40年代だろうか、初代ウルトラマンは、面白い。
 チャンと人間が着ぐるみ着てるのが分かるのだけど、その怪獣の手づくりの生々しさが、逆にリアルで恐かったりする。

 番組の最後に、「不適切な表現が一部にあるかもしれませんが、当時のままに放映しました、云々」みたいなテロップが映される。
「ちびくろサンボ」でもそうだったみたいだけど、過去に人気があり、大衆に受け入れられた表現方法が、なぜ現代において「ダメ」みたいにされてしまうのだろうか。
 逆行している。くだらない権力を握った、表現を統制する人々が、勝手に決めているように思える。子どもがそれを見て何を感じるかはその子次第だし、何か悪影響があるとしても、親や身近な大人が子どもを守ればいいのだ、解釈の仕方や、この物語の云いたいことについての考え方を教えながら。

 昔はこういう表現があった、ということを容認せず、受け容れず、「排除」の方向で規制することは、ファシズムにさえ通じていくように思う、突き詰めていけば。
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