第373話 職を思う

文字数 846文字

 期間従業員も、もう、できれば辞めたいと思う。
 来年の2月いっぱいまでの契約なので、それまではやるつもりではいる。
 さしあたっての今の望みは、来年の2月までこの仕事を続け、満期になったら『辞めること』である。
 そして3ヵ月くらい、自宅で好きな本を読み、好きな音楽を聴き、かねてからの課題である「私の不登校体験」を小説化したい。
 ぼくの文章は、けっして大衆受けしないのは分かっているので、ひそやかに書き上げたい。まったく、自分の40歳記念である。

 自分に「合った」職業など、ないということは、いつのまにか知ったつもりになっている。
 ぼくは非常にワガママで飽きっぽいので、これはもう仕方ない、と、妙な開き直りも、いささかある。問題は、それでどうやってイキルかということだが、これも、どうにかなるだろう、と窮極的には楽観しているので、これまた救いようがないといえば、ない。救われることが正しいとも思えないので、さらに手の打ちようがない、といえば、ない。
 つまり、どうしようもないのである。

 ともかくあと5年は養育費を払いたいので(義務とか権利とかではない。思い、だ。)、何といっても職にはありつかねばなるまい。
 それは現実である。
 ぼくは、自分の生を、生きるだけ。これだけは、唯一スイコウできる自信がある。あっても、何の役にも立ちそうにない自信である。
 ぼくは、矛盾のかたまりである。安定に憧憬し、不安定に安堵する。

 子どもの頃、漫画家になりたかった。少年誌に、4コマ漫画を投稿したら、よく掲載されて、千円とか二千円とか、雑誌社から送られて、思えば生まれて初めて「稼いだ」お金が、漫画だった。
 今は、その漫画が、文字、言葉に代わった。自分の思いのたけが、言葉という形に、少しでも近づけた時、ぼくはとても嬉しくなる。

 といって、作家なんかになりたくない。要するにぼくは職業を持ちたくないのだ。ぼくは、何をさしおいても、自分自身でありたいのだ。自分自身が何たるかも、知らないで。

 外は、雨が降っている。
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