第５６５話　自殺考

　自殺を「逃げ」とすることは、自殺できない人間の自己正当化に繋がるようにも感じられて、あまり好きではない。
　そこには、自殺を考える者に寄り添おうという気が、微塵にもないように思われる。あるいは、理解しよう、という気が。

　ところが、自殺を考える人間は、非常に孤独なのだ。
　何が人を孤独にさせるのか。寄り添われない。理解されない。そこから、孤独はやってくる。

　べつに、寄り添えなくてもいい。理解できなくともよい。大切なのは、その「気」があるか、だ。
　自殺を思う人を、生きる「正しさ」を横にやり、まっすぐ見ていられるか。その人の苦しみに、どれだけ近づけるか。
　その「気」が、自殺を考える人のまわりに、あればと思う。