第403話 フクは体重が減っている

文字数 926文字

 正確に測ったわけではないが、そう感じる。
 心なしか。でも、心なしだから、確かなようにも思うのだ。
 フクは、着実に減量している。

 ご飯を与える側も、マメでないといけない。
 飼い主も、飼われる身のものも、同じ方向を向く時は、努力を要する。どっちが飼われているのか知らないが。妥協の連続が結婚だ。

 フクは、少量のご飯で全くとりあえずの、全くとりあえずの満足を得、束の間の充福の時間が過ぎると、確実に腹が減って、ご飯の催促をするのだ。
 だが、そんな分刻みではない。せいぜい2、3時間に1回の割合だと思う。だから、さして、マメというほどのものではない。

 だが、なんといっても、フクは偉い。昨日、ぼくは近所の魚屋でマグロのブツ切りと、煮干を買ったのだ。帰宅して、お膳の上にそれらを開封して置いて、ぼくは洗濯か何かをやっていた。フクは、いつでも、マグロのブツ切りと煮干を、食べることができた。だのに、フクはそれらに目もくれなかった。

 一緒に住み始めてから、フクがキャットフード以外のもので口にしたものは、「かつおぶし」のみである。ホウレンソウのおひたしの上にふりかけたのを、フクはぼくの目を盗んでモシャモシャ食べた。「コラッ!」と口語で叱って以来、フクは人間の食べるものに強い固執を持たなくなった。興味はあっても、「これは別の種類の生物の食す物なんだ」という意識が、彼の頭のどこかに強く刻まれたようである。

 今、フクが1日に摂取しているご飯のg数は、50~60である。
 太らせてしまったのはぼくの責任なのだから、ぼくが痛みを感じたいのだけれど、申し訳ないがフクに、ごまかしごまかし、感じてもらっている(はずである)。
 肥満はやっぱり、よくないよ、フク。可愛いけど。もうちょっと、お腹のタルタルをなくそうね。

 ところで、今年はまだフクを獣医に連れていっていない。猫4種ワクチンの。(猫ウイルス性鼻気管支炎・猫カリシウイルス感染症・猫伝染性腸炎・猫白血病ウイルス感染症。)
 人間の予防接種にも、違和感を感じる飼い主である。ワクチンによって、フクに副作用のようなものが…というのが心配なのだ。むろん、ワクチンを接種させないことによって、フクが病気になるのも心配なのだが。
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