第493話 福のポォズ

文字数 470文字

 まっすぐな視線。
 福の、片目は青、片目は茶色の、ふたつの目が、ぼくに浴びせられる。
 ちょこなんとおすわりして、ぼくをまっすぐに見る。
 ぼくは、福の従奴と化す。「はい、遊ぼうね~。」

 あの目線で、あきらかに否応なく「遊んで」といわれては、無視はできない。

 福は、元気である。遊びたくてしょうがない。もっとも、「食べる」か「遊ぶ」か「寝る」か、しか、彼の人生での主体的な選択域は、ないかのようであるが。

 福は、よく寝る。
 部屋の灯りが眩しいとき、彼は「大魔神」が埴輪から大魔神に変身する際の、顔に両腕を交差させるポォズをとる。ソファーなんかに丸くなりながら、その棒のような両手を、顔の前でバッテンにクロスするのだ。

 ああ、可愛い。おお、可愛い。

 そして福は、よく食べる。
 あきらかに、体重は変わっていないと思える。「キャットフード小出し作戦」は、ただ、「ここでこういうポォズすれば、くれるよね、ご飯、ネッ」と、福に、「ヘンなクセ」をつけただけなのだった。

 でも、ありがたい。
 元気でいてくれてありがとう。
 福、きみは、世界一、宇宙一の猫だよ。
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