第705話 生きていくことは大変だ、

文字数 274文字

あちこちに鎖が絡まっていて、少しでも動くと、血が噴き出す。

太宰がそう云っていたのを、タバコを買いに行く道すがら、ふいに思い出した。
外は暑かった。歩いていて、ぼくは血ではなく、汗を噴き出した。

しかし、その鎖とは。
あったんだよな、太宰には。

一緒に、玉川へ飛び込んだ女とも、その鎖で繋がれていたのだろう。
赤い糸なんかより、鎖のほうが、よほど重く、しかし確かだったろう。

主観的真実、とかも云っていた。
「どうせ私は異様ですよ」とも、湯治先の温泉に浸りながら、小説の主人公に云わせていた。

久しく、太宰を読んでいない。
「生まれて、すみません」、読み返してみるか。
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