第240話 期間従業員日記(21)

文字数 1,219文字

 グループ・リーダー1人、チーム・リーダー2人、エキスパート1人、一般社員6人、期間従業員8人という構成。
 休憩所には四角いテーブルが3つあり、そのまわりに置かれたパイプ椅子の上にめいめいが座っている。グループ・リーダーだけ、少し離れたパソコンの前の椅子に座っている。

「おはようございます。」夕方でも「おはようございます」の挨拶をしてこの休憩所に入ってくるぼくに、誰も挨拶を返さない。
 ぼくはドアに一番近い席に座る。15時45分頃。あとから誰かが「おはようございます」と言いながら入ってきても、誰も挨拶を返さない。ぼくはそのドアに一番近い席に座っているし、やはり挨拶はしたほうがいいと思われるので、おはようございます、を言う。来る人来る人に挨拶を返していると、「ひとり朝の挨拶運動」状態になる。

 よく話し声が聞こえるのはぼくのいるテーブルで、何やかんやとしゃべっている。ぼくはたまに相槌を打つくらいで、あまり積極的にしゃべっていない。チームリーダーと一般社員がふたりでよくしゃべっている。ぼくは縦長のテーブルの幅の狭い所に座っている。よくしゃべっているふたりはぼくの両隣りにいて(つまり彼らは向き合ってしゃべっている)、ぼくはちょうど挟まれた格好になっている。
 オートバイ、テレビゲームが主な話題である。オートバイやテレビゲームに全く興味のないぼくは、黙ってタバコを吸いながら、ぼくのほうに向いていないテレビ画面を斜めから見ていたりする。

 ぼくの両隣りを除いては、みんな黙っている。目線はテレビに行っているが、実は何も見ていないかのようである。
 休憩所での、どことなく不自然な空気から解放されるのは、16時5分にチャイムが鳴ってストレッチ体操の音楽が流れ始め、みんなが休憩所を出て体操を始める時だ。
 5分間の体操が終わり、グループリーダーから災害情報などの連絡事項が短く伝えられる。
 誰かが「異常処置、手を出す前にまず停止。みんなでつくろう安全職場、ヨシ!」と言う。彼が言ったその後で、ぼくらはそれを声を合わせて復唱する。
 異常処置、手を出す前にまず停止。みんなでつくろう安全職場、ヨシ。
 そして、めいめいが自分の工程へ行く。16時15分、もう1度チャイムが鳴ってラインが始動する。

 2時間、ぼくたちは然るべき義務(流れてくるエンジンに必要な部品をミスのないように組み付けていく)を終え、また休憩所に入る。
 10分間の休憩の後、再びぼくらはそれぞれの自分の工程へ入る。チャイムが鳴る。ラインが動き始める。
 1時間50分後、ラインが止まり、10分間の「4S」の時間に入る。4Sとは、整理・整頓・清潔・掃除、の「S」の頭文字のことである。
 これが終わって、チャイムとともにぼくらは食堂へ行く。20時25分。
 21時5分に予鈴のチャイムが鳴り、またぼくたちはラインに着く。21時10分、ライン始動。
 ここから、ぼくらにとっての「午後」が始まる。
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