第15話 下田逸郎のこと

文字数 278文字

 初めて聴いたのが、小学校5、6年の時だったと思う。
「さりげない夜」。兄のステレオの上に置いてあったので、聴いたのだった。

 心に沁みる、とは、このことか、という音楽だった。
 私の中の細胞ひとつひとつが、共鳴した。
 涙がこぼれそうになった。
 悲しいのではない。情熱でもない。
 ただ、メロディーと下田逸郎の声、ギター。
 それだけなのに。

 以来、もう30年近くファンをやっている。
 これはおそらく、死ぬまで好きであり続けるだろう。
 モーツァルト、ビートルズ、いろんな音楽を聴くが、私に最後に残り、それまでいつも心に住んでいてくれるのが、下田逸郎という人の音楽だ。
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