第237話 期間従業員日記(19)

文字数 723文字

 月曜日である。
 また1週間が始まる。明日東海大地震に見舞われるとしても、「1週間がある」かのように思われてしまう週のはじめ。
 なかなか、今日1日1日精一杯生きる、という刹那的な生き方は難しい。先のことを考えてしまうから。

 この会社に勤める正社員は、ほとんど公務員のようである。
 まず解雇がないといわれている。悪質な交通事故を起こしたりすると、部署が変わったりして「自主的に」辞める方向へ行かされるらしいが。
 旅行積立金というのも給料から自然に引かれて貯蓄されていくし、会社関連の保養所的な場所はたくさんあるし、レジャー、行楽にもいろいろ割引される特典も少なくない。

 実にまったく「生き易い」レールの上を走ることになる。みごとなまでに、まるですべてが用意されているかのようだ。
 職場の休憩所のパソコンで、お金がなくなったら借銭さえできるらしい。200万を借りようとしていた正社員に、「そんなに借りるんですか」と聞くと、「ボーナスで払えるから」と答えられた、という話を聞いたことがある。

 期間従業員というのには、たいした特典も何もない。1年通して働いて、税金で引かれた65万円が「満了慰労金」として給料の他に払われるくらいである。
 ひとと比較して云々かんぬん、というのは、非常にあさましい発想だと思うし、正社員との立場の違いをとやかく言うつもりはない。
 何なんだろう、この社会、この世界、この自分、と考えるだけである。

 うつ病で何日も出社してこないエキスパートもいるらしいし、ほとんどアル中のようなグループリーダーや正社員もいるらしい。
 みんな(みんなかどうか知らないが)大変なんだと思うが。
 しかし月曜日、いい天気である。働きたくないものである。
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