第200話 期間従業員日記(8)

文字数 652文字

 今日、嬉しいことがあった。
 文章、それも誰かに読んで頂く文章は、「悲惨なものほどウケる」らしい、ノンフィクションの場合。残酷だけど、事実らしい。
 まぁそれはどうでもいい。嬉しいことがあったんだから。

 ぼくの母がボケたことを、職場の親しい人に言ったら、
「そうですか…。つらいですね、僕だったら耐えられない。」
「そっか…。わかるよ。」
「あっはっは。しゃーないよ、かめくん。」
「かめさんのお母さんとお父さん、ラブラブなのね。」
 あっはっは、と笑ってくれたのは、いちばん親しい正社員の人で、笑われて、ぼくも気が楽になったりした。
 そっか、わかるよ、と言ってくれたのは、コワモテの期間従業員の人で、一見ほんとにコワイ顔の人なのだが、実は繊細でよく気を使ってくれる人である。

 ところで、ぼくは確かに疲れている。週末は日帰りで東京に帰ったし、毎日電話で母と2時間位話している。職場で働いていても、ぼくの疲労は周囲にバレていた。
「かめさんを励ます会」をやろう、と言い出してくれたのが、そのコワモテの期間従業員の人である。来週の金曜、仕事帰りに居酒屋で開かれる。6名位が参加してくれるそうだ。

 これは、やっぱり嬉しい。おかげで今日、張り切りすぎて仕事して、また疲れたりしたけれど、こういう理由だと疲れの質が違う。どんよりではなく、さわやかに疲れることができた。
 職場は、どうしても人によってつくられる。
 ぼくは、こういう職場、この人たちと一緒に働けて、ありがたいと思う。
 自然と、仕事にも力が入ってヤル気になってしまう。
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