第612話 まぁ、雇われ労働は明日でひとまず終了なので

文字数 775文字

 気楽ではある。残っている有給休暇に未練もない。
 ただ、我が職場で不思議なのは、人が余っているのに、みんな有給休暇を取らないことである。
 ボスが、「年休(有給休暇)は1日1人」と決め付けているためであろう。
 しかし、1人が休んでも、ライン外は4人もいるのである(通常は2人)。つまり、3人休んでも何の問題もないのである。
 つくづく、不思議である。

「なんでだろうね。オレがグループリーダーだったら、絶対休めって言うけどなぁ。」
 会社まで送ってくれる、学園卒業の(会社は学校も持っているのだ)、ほとんど「シュッセ確定」的な友達が言う。この友達にはずいぶん助けられた。
 ぼくが有給休暇を10日以上も残しながら、「休まぬように」とボスに言われ、しかし職場に行けば人が余っているという状況。
 なんでだろう?という疑問、腑に落ちない気持ちのままの労働は、なかなかくるしいものだった。

「昼メシ、みんなで食べるために来たら。」
「チョチョイ、って仕事すりゃ、すぐに昼だよ。で、またチョチョイってやれば、終わるし。」
 けっして友達は、「がんばれ」」とぼくに言わない。
 昼メシ仲間の、やはり懇意のMさんも、「あと1日くらい、休みたいやろ、かめくん」と、困ったように笑いながら言う。Hさんも、「体調悪いってことにしたらどうですか。口裏、合わせますよ」と協力的だったりする。

 前職場の上司は、とびきり美人の写メールを送ってくれたりする。よくわからない。
 しかしつくづく、人は不思議なものである。
 人によって、まったく職場の雰囲気や居心地の良さ悪さが面白いように左右される。
 職場を離れても、気兼ねなくつきあえるのは、ほんとうにありがたい。
 そういう人たちと出会えたのは、この、イヤな会社。
 そう思うと、イヤ~な会社も、ありがたいように感じられたりする。
 くるしさも、悪くない。
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