第436話 フレーム。適当な相槌。

文字数 375文字

 この人は、こういう人だ、というフレームを通して、人は、人を、見るらしい。
 だから電話なんかで誰かと話していて、うまく聞き取れない時があっても、ああ、この人はこういう人だから、こういうことを言っているんだろうな、と想像することができる。
 で、無責任に電話に向かってうなずいたりする。

 現実に誰かがぼくのそばに来て、何か言った。ぼくは仕事中で忙しかったので、うん、うん、と相槌を打った。相手の言ってることは、わからない。でも、たいしたことではないような空気は感じていた。
 仕事が落ち着いてきて、誰かがまたぼくのそばに来る。
「すみません、さっき、よく聞こえなくて、適当に相槌打っちゃったんです。すみません、もう一度、言ってもらえますか?」ぼくは言う。
「んー、何だったっけ。オレも忘れちゃったよ。たいしたことじゃない」と誰かが笑った。

 ああ、今日も暮れた。
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