第174話 「死に至る病」

文字数 728文字

 キルケゴール。
 著作集、「あれか、これか」を4巻くらい買ったのが、15の頃。マセガキであった。
 なんとなく分かったような気になって読んで、実情は全然分かってなくて、残っているのは「死に至る病」という言葉。

 死は、モーツァルトが言っていたように、友達である。誰にだって、来る。白人にも黒人にも、富んでる人にも貧しい人にも。

 僕が、この「死に至る病」にやられたのは、小学4年の時だった。現実の、病。
 いまは、もうメジャーになったような「不登校」である。
 これが、僕の中の知らない僕が、初めて顔を出したものだった。
 両親に迷惑をかける僕は、死にたいと思った。生きていても、迷惑だけかける人間だと思った。生きている資格なんかないと思った。

 でも、両親は僕をムリに学校に行かせようとしないでいてくれた。
 千葉の、国府台病院の小児精神科、渡辺位先生に「なんで学校に行かせたいんですか。行かなくても、いいじゃありませんか。」と言われたのがきっかけだった。

 しかし僕は、まだあのとき芽生えた「なぜ自分は学校に行けなかったのか」という自分自身のことを、いまだに引きずってしまっているようである。いじめも体罰も、何もなかったのだ。

 僕は、「おかしなもの」には、属したくない傾向がある。これはなかなか致命的である。
 この会社にも正規の社員になれる機会があったにもかかわらず、「身体が」拒否する。
 フリーライターをやれ、という機会や、こうやって会社を運営せよ、とかいう機会も、僕の中の何かがそれを拒否していた。
 頭では、もちろん「あぁこうやて生きていけばいいんだ」と分かっていたとしても。

 社会が病んでいるのか自分が病んでいるのか分からない。
 ただ、言えるのは、「生きにくい」。
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