第620話 本気で良かった、下北沢の下田逸郎ライブ

文字数 1,179文字

 3月24日、下北沢にあるライブハウス「ラ・カーニャ」に行ってきた。
 目当てはもちろん下田逸郎である。
 元妻と、高校生になる一人娘、20年来の親友Yさん、ぼく、というメンバー。

 開演前、下田逸郎さんは客席の隅に座って、何やら女性のお客さんと談笑していた。
 目が合ったので、会釈。なんとなく話したい衝動に駆られて、長野の鬼無里村で、以前お話したこと、小学校高学年からずっとファンであること、子どももファンであることなどを伝えた。

「まだ私が保育園に通っていた頃、渋谷のジァンジァン(ライブハウス)に行って、演奏の後半、私、グズったみたいなんです。スピーカーの近くで、うるさかったのかもしれません。そしたら、下田さん、ノーマイクで唄ってくれた、って、お父さんから聞きました」
 というようなことを、一人娘は下田さんにしゃべっていた様子。
「下田さんって、いい人なんだねぇ」と、下田さんは笑って、一人娘に応えていた。

 午後7時10分くらいに演奏開始。10人くらいの予約客を待っていたらしいが、インフルエンザで来れなくなったとのこと。
『今年の目標』という唄から始まったと思う。い~い唄だった。
「目標って、つくった時点で終わるね。こんなもんか、って感じで」
 曲の合い間のトーク。
「素潜りのダイバーが、海の中でクジラに出会った。上がってきたダイバーは、感動してた。クジラに会ったことじゃなくて、『クジラが、自分の存在に気づきながら、自分の存在を認めながら、無視してくれたこと』に、感動してた」

 今回のライブ中、後半、1曲終わる度に、客の誰かが必ずトイレに立った。(ぼくも行ったし、元妻も行った)
 トイレに行くには、下田さんの横を通って行かないとイケナカッタ。
 最初トイレに立った勇気ある客は、下田さんに会釈して、下田さんも会釈していたが、そのうちクジラよろしく、トイレに立つ客の存在を認めながら、やさしく無視してくれた。

 ライブの途中で入ってきた客も、下田さんの横を通らねばならず、トーク中だったので、「お客さんです」と下田さんが紹介したりしていた。

「どんなふうに曲つくった。か、覚えてないのが結構ある。ここで、自分で聴きながら演奏したい」みたいな話。
「勝手にやります…今までも勝手だったけど。」

 定員60名の小さなライブハウスだが、ほとんど満席だったと思う。アンコール2曲。終演、8時50分くらい。「来てくれて、ほんとにありがとう」といった内容の唄で〆。

「自分で唄をつくって、その唄に自分がつかまって流れるなり、乗っていくなりする音楽」を、下田さんはつくり続けている。
 モノづくりをする時は、このスタンスだ。

「セクシィ」と「早く抱いて」は、やっぱり演奏してくれた。
 DVD「この世の夢 あの世の唄」も、もちろん購入。このDVDに入っている「早く抱いて」の映像に感動している。
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