第662話 上も下もなく

文字数 569文字

 フランスの、ジャーナリストか、クロード・ギヨンとイブ・ル・ボニエックは、「警察が無くなり、銀行が無くなり、国家が無くなることを我々は望んでいる」と書いていた。
「自殺」(徳間書店)という本の中で。
 昔バイトをしていた予備校の関係で、一度、浅草かどこかの居酒屋で、彼らと同じ時間を過ごした。
 クロードは人のよさそうな紳士で、イブはやたらと繊細な感じがした。

 彼らが来日して、大変そうだったのは、ぼくの師匠的なKさんだった。
「付き人みたいだよ」と笑っていた。通訳したり、あちこち案内したり、彼らの質問に答えたりしていたのだと思う。

 しかし、彼らのような存在がある、ということを知れただけでも、ぼくはありがたかった。
 作家のような、カトリーヌ・ベーカーさんも同じく来日していて、ほんとうに気さくな、やさしい女性だった。
「フランスの脱学校派」というような人たちだった。
 特に何を話した、というのは覚えていないけれど、彼らの表情や雰囲気は今も忘れないし、やはり「その存在が心に入ってくる存在」としか言いようがない。

 クロードとイブの共著に、「親も教師も国家も悪い」というのがある。これはひどい日本語訳らしく、「上もなく、下もなく(上下の関係なく)」というのが、原書のタイトルに近いとのことだ。

 上もなく、下もなく、国家も警察も銀行もない。
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