第169話 夢の夢

文字数 856文字

 朝目が覚めた時、はっきり覚えている夢もあれば、何も覚えていない夢もある。
 でも、仕事中なんかに何かの拍子に「あっ、こんな感じの夢だったな」と昨夜見た夢を思い出したりする。
 まったく突然に。現実の空気の波長のようなものが、夢に見て感じた波長とリンクした時に、思い出すようである。

 音楽を聴いていても、ああ、あの頃…、と思わず思い出してしまう過去がある。
 荒井由実の「ミスリム」は、中学2、3年の11月を思い出す。当時つきあっていた女の子との、淡い恋のことを思い出し、せつなくなる。しかしこのアルバムは名盤です。

 モーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」は、先妻との新婚の頃を想起させる。
 彼女からもらったCDでもあって、やさしいハープ、ちょっと我の入ったようなフルート、ああ彼女はハープでオレはフルートだったんだな、なんて何の根拠もなく思ったりする。

 さて、このブログ。僕の働く「T自動車」について書いた記事には、なにやら「参照数」がやたら多い。
 マスコミも、やたらこの企業のことを取り上げたりしている。
 なんかウケ狙いでこのブログをやりたくないと思ってしまう。このブログ名「胎動」は、自分の中へ、自分を掘り下げて、書きたい、と思って付けた名前である。アクセス数を気にして書くわけではない。

 自分というやつは、なかなか自分でいながら、得体の知れないやつである。
 こいつはもちろん自分でありながら、やんわりと自分を知らないまま生きているような厄介者である。
 寝ている時に見る夢は、とりとめがないけれども、自分の知らない自分を、自分に提示しているように思える時もある。
「ああ、なんだオレ、このことを結構気にしてたんだな」とか。

「記憶」にも、そういう意味合いがあるように思える。
「なんでこんなクダランこと覚えてるんだ。」
 でも、それは頭で考えること。
 身体、細胞は、「おい、この記憶はお前にとってだいじなんだから、とっておけ。」
 そう感じてるから、クダラン思い出も忘却されず、インプットされているように思える。
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