第77話 人の、呼び方

文字数 707文字

 私には一人娘がいるのだが(現在中学生)、彼女には、幼少期、両親(つまり私と元妻)の呼び方を、お父さんお母さんではなく、名前で呼んでいいよ、と教えていた。
 だから娘は、お母さんのことを、「ヨシコ」と呼んでいた。
 私のことは、どういうわけか「ミツル」ではなく、「お父さん」と呼んでいた。
 理由を聞くと、「お父さん、のほうがカッコいいから」であった。

 娘から、聞かれたことがある。
「なんで名前で呼ばれたいの?」
 私は答えた、「お父さんは、お父さんである前に、ミツルなんだ。トモミが、子どもである前に、トモミであることと、同じだよ。お父さんが、トモミを、『子ども』と呼ぶのと同じなんだ、トモミがミツルを『お父さん』と呼ぶことは。」

 だが、どうも「ミツル」より、「お父さん」のほうが、カッコいいらしい。
 たまにメールとか手紙をくれるが、やはり「お父さん」と書いてある。
 元妻のことは、「お母さん」ではなく、「ヨシコ」と書いてある。

 私は、「男だから」とか「女だから」というのが、あまり好きではない。
 父だから、母だから、よりも、個々。個人。

 友人の呼び方も、たまに、どうしよう、と思うときがある。
 年下の人からは、当然のように「かめさん」と、「さん」付けで呼ばれる。
 で、私は「○○くん」と、「くん」付けで呼ぶことがある。
 だが、自分がどうもエラソウに見えてしまう。
 相手が「さん」付けで呼んでいるのだから、私も「さん」付けで返したくなる。

 何というか、「対等」でありたいのだ。現実はどうであれ、私の気持ち。
「教育」という言葉が好きでないのも、この理由からだ。
上から下へ、というベクトル。
 ……どうもコレ、ニガテなんだナ。
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