第244話 期間従業員日記(24)

文字数 715文字

 しつこく書き続けてきた「反対番の作業のやり方における品質・不良流出の心配」、もう、いいか、という気持ちが半分占め始めた。
 いつも昼食時、ぼくは前職場の人たち3人と一緒にメシを食っている。今日、この件について相談してみた。
「責任感、強すぎですよ、かめさん。上の人たちにも言ったわけだし、あとは上の人たちが決めることです。かめさんはやることをチャンとやっているわけだから、反対番のことをそんなに考えて胃潰瘍とかになったらイヤですよ」
 やさしい言葉に慰められて?、そういうもんかな、と思い始めた。
「いや、けっこう図太い自分も横にいるから、胃潰瘍とかにはならないよ」と言いつつも。

「私だったら、そんなに考えない。ミッちゃんはまじめだから、その車を買うお客さんのことも考えてるんだろうけど、反対番のことを上の人なんかに言わなくてもいいのよ。自分がしっかり仕事してれば」
 家人は言う。
 いいのだろうか、こんなにやさしい?人ばかりで。

 ぼくは正義感ぶるとかまじめだとかは関係なかった。
 ただ、『不良品が流出する可能性を秘めた反対番の仕事のやり方を知っていながら見て見ぬふりをするのがイヤだ』というだけなのだった。
 日頃から、品質に気をつけること、品質第一、品質品質と謳いながら、全然品質のことなんか考えてねーじゃねぇか。客のことなんか考えてねーじゃねぇか。ということ。ただこのことに、ぼくは「!?」なだけだった。

「世の中、不条理なことは一杯ありますけど、素晴らしいことも一杯ありますよ。サッカー、2-1でドイツがコスタリカに勝ってますよ。」
 昼メシを一緒に食べていた彼から、メールが来ていた。
 さて、サッカーでも見るか。もう終わってるじゃん。
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