第624話 男どうしのスキンシップ

文字数 736文字

 先日、遅ればせながら、ぼくの送別会とO君の歓迎会を、Hさんに開催して頂いた。総勢6名の飲み会である。
 O君は半年くらい前に期間満了退社して、その時ぼくやHさんと同じ職場だった。失業手当をチャンともらいながら好きなことをして、また来たわけだ。22歳の、自我をシッカリ持っている若人である。

 ぼくらは駅前で待ち合わせた。O君とぼくは挨拶すると同時に抱き合った。
 お店に行く道すがらも、歩きながらなんとなく手と手を触れ合わせたり、背中をおたがい手で軽くたたき合ったりして、腕を組まんばかりの勢いだった。
 それは友達以上・恋人未満のような親密なオーラを周囲に発散していたかもしれない。

 だが、ぼくはとても気持ちが良かったのである。
 特に、お店の階段を上る時、O君はぼくの後ろにいて、ずっと背中をさすってくれている時、ぼくはもう本当に、まるで医者からの「手当て」を受けているような気が、強くした。
 最近ずっと、背中が痛かったのである。

 O君の手には邪気がなく、まっすぐぼくに暖かみを、セーター越しに授与してくれていた。
 ぼくは40歳であり、O君とのトシの差は18である。恋愛もそうだけど、友達にもトシの差は関係ないのだ。
 しかし、この広い世界、日本の人口1億5千万?人の中で、男どうしでこうやってスキンシップを取ることができるのは、O君とだけである。
 飲みの席上も、O君とぼくは隣りあわせで、ふたりで背中に手をまわし、たまに抱き合ったり手を触れ合わせたり、「イイ子イイ子」したりした。
 Hさんが「仲良しだなー」と、どうしようもなげに本気で可笑しそうに笑っていた。
 さすがに、キスはしていないのだけど、こういったスキンシップとキス的なものは、別モノのような気がする。男どうしの場合。
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