第243話 期間従業員日記(23)

文字数 829文字

 午前中の流れは前々回記したので、今回は午後の流れ。
 21時10分、ぼくたちはまたライン作動とともに、仕事を始める。
 ガガガガガ。ピピピピピ。
 インパクト(エアの圧力で動かすピストル形をした器具。ボルトを締める際に使う)の音、ナット・ランナー(一度に数本のボルトを自動的に締め付ける機械。1台、1000万円するらしい)が作動時に出す電子音があちこちで聞こえ始める。
 午前中と同じ光景、同じ作業、同じ存在。

 22時40分、チャイムが鳴り、休憩に入る。
 ここら辺りまで来ると、みんな「疲労」という共通項によって休憩所の中は奇妙な連帯感で結ばれるような空気になる。それぞれ自分のことだけ考えているとしても、疲れという接点が、ひとりひとりを和ませている、とでもいうような。
 テレビがついていないと、目線のやり場に困ることもある。

 22時50分にチャイムが鳴ってラインが流れ始める前に、ぼくたちはまたそれぞれの受け持つ工程に入る。
 23時半前後くらいに、放送が流れる。「コントロール室からお知らせします。本日のGRラインの残業は、30分です。よろしくお願いします」

 午前0時20分、チャイムが鳴ってラインが止まり、ぼくたちは休憩所へ向かう。
 0時30分、さぁ、あと1時間だ、という感じでライン作業に従事。
 午前1時、定時のチャイムが鳴る。でももちろんラインは止まらない。残業30分だから。

 1時30分。ラインが止まるはずなのに、たまに止まらない。機械のトラブルやアクシデントによって不本意にラインが停止された数分の時間があった場合、その時間につくることができなかったエンジンをつくるためである。

 今日は1時36分にラインが止まった。少なくなった部品箱に部品を入れ、フタを閉める所は閉めて、落としたボルトを拾って、さぁ、帰ろう。ロッカールームへ歩き出す。
 これが2直の週の、ぼくの勤める工場の時間の流れである。
 午後からの時間の流れが、本社地区とは若干違っているらしい。
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