第301話 フクをおもう

文字数 705文字

 心配である。
 かなり、暑いのだ、この部屋。
 猫は砂漠気候出身のルーツをもつらしいから、けっこう暑さには強いらしいが。

 しかし、フクを見ると笑ってしまうのはなぜだろう。
 一昨日、風邪で会社を休んでパソコンに向かうぼくに、「ニャァ、ニャァ」と控えめに声をかけてくれた。
 おすわりをして、まっすぐな視線で。
「(よかったら)遊んでよ、(よかったら)遊んでよ」という、けなげな「ニャァ」だった。

 今フクは、冷蔵庫の横の壁に首をもたれて寝ている。もたれるのが好きなのだ。
「ちょっとタバコ買ってくるから。すぐ帰ってくるからね」
 声をかけると、「ニャァ~ァ」と返事をする。「しょーがねーなー」というニュアンス。
 なんだかんだ、我慢強いのだろう、猫は。

 この頃、仕事に行っている時、部屋にひとりでいるフクが、心配である。
 ベランダの窓は開けてあるから、風は入るだろうけど、暑いだろうなぁ、と思うのだ。
 ほんとうに、よく耐えていると思う。

 今も、暑いのだ。暑いはずなのに、フクは冷蔵庫の横の壁にもたれて熟睡しているのだ。まるで、なんでもないかのように。実に平和な寝顔なのだ。
 すると、また笑ってしまう。

 フクがうちに来てから、確実にぼくは寝不足になった。夜中に、よく起こされる。もちろんお金だってかかる。
 でもフクが、やっぱり元気でいてくれていることが、ありがたい。これは、かけがえのないもの、という表現しかできないように思う。

「かめさん、お金を貯めようと思ったら、友達をつくらないことですよ。」
 親しくなったKさんから、言われた。
 しかし、何だかんだ友達をつくってきた。

 フク君。もしかして、きみが、ぼくの一番の友達なのかね。
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