第266話 6月は、別れの季節

文字数 459文字

 6月、長兄が、ぼくが生まれる前に亡くなった。
 6月13日だった。
 3月16日が、ぼくの誕生日。613、316。
 ぼくは、生まれ変わりのように育てられた。

 世田谷で、不登校関係の場所を提供してくれた、数学者の土師さんが亡くなられたのも、8年前の6月だった。
 土師さんの反戦運動的な生き様、
「『マイペース』で行こう!」と書かれた、頂いた年賀状。
 土師さんは、ぼくが年を取るごとに大きな存在になっていく。

 ぼくの「青春時代」を現実に一緒に生きてくれたような、鈴木さんの存在。
 鈴木さんも、この時節に亡くなった。もう、4年も経つのか。
 でも、ぼくは鈴木さんの死を、まったく受け入れていない。
 認めることができない。
 ぼくは、ぼくの中に鈴木さんがいることを、確認できているから。

 母が認知症の症状を見せ始めたのが、今年に入ってからである。
 幻覚的な症状がある以上、中より上であろう。
「認知症の、中より上の人は、発症後2、3年で亡くなられる。」
 新聞で見た記事。

 ひとの、命って何だろう。
 なんで生まれて、なんで死んで行くのだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み